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ANIARA アニアーラ

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「ANIARA アニアーラ」(2018スウェーデンデンマーク)星3
ジャンルSF・ジャンルサスペンス
(あらすじ)
 放射能で汚染された地球から火星へ移住するため、8,000人の乗客を乗せて旅立った巨大宇宙船アニアーラ号。しかし不慮の事故により燃料を失い、目的地の火星への軌道を外れ彷徨うことになってしまう。
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(レビュー)
 アニアーラ号には人種や年齢、性別を問わず多種多様な人間が乗っている。生活するために必要なインフラも整備されていて、さながら一つの国家のような共同体が形成されている。しかし、そんな彼らを待ち受けていたのは凄惨な運命だった。火星の軌道を外れたアニアーラ号は、目的地を失い宇宙を永遠に漂うことになってしまう。

 物語はヒロインMRの視座を中心にして展開される。彼女は”ミーマ”という装置を管理している科学者である。この”ミーマ”というのは人々の記憶を映像として再現して見せてくれる、言わばVR風のアルバムのようなシステムで、中々斬新な設定だと思った。閉ざされた宇宙船ではこれが人々の癒しの場のようになっている。

 ところが、この”ミーマ”が「2001年宇宙の旅」(1968米伊英)のHAL9000よろしく、プログラムに負荷がかかりすぎて暴走してしまう。人々は心のよりどころを失くし、カルトにのめり込んだり、未来を絶望し幼子を手にかけたり、自らの命を絶ってしまったりする。

 宇宙船という閉ざされた空間で人々が正気を失っていく様は、アンドレイ・タルコフスキー監督の「惑星ソラリス」(1972ソ連)を連想させられた。
 また、宇宙船の中は徹底した管理社会で支配されており、このあたりにはジョージ・オーウェルのディストピア小説「1984」との共通性も感じられた。

 個人と社会、地球と宇宙、現在と過去、愛と死等、哲学的な思考を巡らせるドラマは、ジャンル映画とは一線を画した重厚さで、中々の見応えを感じる1本である。

 監督、脚本は本作が長編2作目の新鋭である。
 演出は静謐なトーンが堅持され、見ようによっては退屈と感じる人がいるかもしれない。ただ、個人的には心身ともに疲弊していく人々の心理描写に見応えを感じた。

 一方、ビジュアルに関してはかなり地味である。おそらくそれほど予算もかけられなかったのだろう。限られた条件を逆手にとった密室劇のような作りにしたのも、低予算ゆえの苦肉の策なのかもしれない。
 ただ、これがかえって映画全体の閉塞感、精神的に追い詰められていく人々のヒリ付いた心理にリアリティをもたらすことに成功している。怪我の功名ではないけれど、低予算でもこうしたジャンル映画は作れるという好例である。

[ 2024/03/24 00:48 ] ジャンルサスペンス | TB(0) | CM(0)

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