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ある女優の不在

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「ある女優の不在」(2018イラン)星3
ジャンルサスペンス・ジャンル社会派
(あらすじ)
 映画監督ジャファル・パナヒのもとに、マルズィエという少女から遺言動画が届く。女優を志すも家族の反対にあい、憧れの人気女優ジャファリに相談しようとコンタクトを試みたが叶わなかったために自殺したということだった。その話を聞いたジャファリはショックを受け、パナヒと一緒に彼女が住んでいた村へと向かうのだが…。

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(レビュー)
 映画はマルズィエの衝撃的な自殺動画で幕を開ける。これを見たパナヒ監督とジャファリは、それが本物かトリックかで口論となる。そして、真相を確かめるためにマルズィエが住んでいた村へ向かう。果たして彼女は本当に自殺してしまったのか?それとも単なる狂言自殺だったのか?

 劇中の映画監督は本作の製作、監督、脚本を務めたジャファル・パナヒ本人が演じている。前作「人生タクシー」(2015イラン)同様、自ら出演しながら、ほぼワンマン映画の体制で撮り上げたミニマルな1本である。

 パナヒ監督は、過去に改革派を指示したかどで逮捕され、20年間映画を撮ることを禁じられた。しかし、そんな逆境の中、彼は挫けることなくアイディアと工夫を凝らしながら映画を撮り続けている。「人生タクシー」は、ほとんどゲリラ撮影だったそうだが、今回もかなり制限された中での撮影だったと想像される。

 物語はいたってシンプルである。
 マルズィエは女優になる夢を周囲に反対され自暴自棄になり自殺動画を撮影した。映画中盤で自殺の真相は判明するが、彼女の思いを知ると、いたたまれない気持ちにさせられる。日本では今一つピンと来ないかもしれないが、現実にイランでは古い因習に縛られて生きる女性がたくさんいる。女性差別的な社会に対するマルズィエの憤りと悲しみ。それが今回の自殺騒動から見えてくる。

 演出は手持ちカメラによるドキュメンタリータッチが貫かれている。ゆったりとしたロングテイクも多く、登場人物たちの生々しいやり取りがリアルタイムで切り取られていて、半分ドキュメンタリーのような作りになっている所が如何にもパナヒらしい。

 例えば後半、ジャファリが車を降りて村はずれの元人気スターの家を訪れるシーン。その間パナヒは車で待っているのだが、夕方から夜になるまでの時間経過を淡々とした筆致で描写している。普通の映画であればここはカットを切って時間を経過させてしまう所だろうが、パナヒは敢えてゆったりとした中で時間の経過を表現しているのだ。それによって待たされる側の心理がよりリアルなものに感じられた。

 そうかと思えば、ラスト間際の瞬発力のある演出は衝撃的である。割れたフロントガラスだけで観客に全てを想像させるスマートな演出は見事と言うほかない。

 尚、パナヒ監督は本作の後にアピチャッポン・ウィーラセタクン等とオムニバス映画を撮り、その後テヘランの検察庁を訪れた際に当局によって拘束され収監されたということである。wikiの情報によれば現在は釈放されて海外渡航禁止令も解除されたそうであるが、彼の身の安全は今でも完全に保証されているわけではない。
[ 2023/12/25 00:47 ] ジャンルサスペンス | TB(0) | CM(0)

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