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PERFECT DAYS

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「PERFECT DAYS」(2023日独)star4.gif
ジャンル人間ドラマ
(あらすじ)
 東京の下町で一人暮らしをしている中年男、平山は公衆トイレの清掃員をしている。仕事を淡々とこなしながら静かで満たされた日々を送る平山だったが…。

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(レビュー)
 中年男・平山の日常を淡々と綴る物語は平板で面白みに欠けるが、ここまで徹底されると、まるで環境ビデオでも観ているような心地よさを覚える。正に”わびさび”のような映画である。

 何と言っても、ラストの平山の表情が印象に残った。
 彼のバックストーリーは時折挿入される夢や、後半から登場する彼の縁故者との関係から色々と想像できる。しかし、その詳細については謎が多く、そのせいで感情移入しがたいキャラクターとなっている。ただ、何らかの事情を抱えた男であることは間違いなく、このラストを見ると決して今の人生に満足しているわけではないということも分かってくる。それに気付いた瞬間、自分は何だか泣けてきてしまった。
 平山は日々に芽吹く小さな奇跡に時折柔和な笑みをこぼすが、それもどこかで無理をしていたのではないか。本当は悲しいはずなのに、それを忘れようとして無理に笑っていたのではないか。そう思えてならなかった。

 これは孤独な人間の物語だと思う。平山は他者との繋がりを極力持たず、自分が決めたルーティンの中に閉じこもって生きている。まるで外の世界に踏み出すことを恐れているかのようである。
 そして、翻ってみると自分も似たような日常の繰り返しの中で生きていることに気付かされる。だからこそ、最後の彼の表情に共鳴してしまったのかもしれない。

 「PERFECT DAYS」というタイトルも実に皮肉的である。”完璧な日々”とはこれ如何に。平山の孤独な生き方を見て憧れる人は余りいないのではないだろうか。
 確かに人生は映画のように劇的なことは起こらない。そういう意味ではこの映画はリアルと言えるが、これを”完璧な日々”と認めてしまうと何だか自分自身がわびしく思えてしまい複雑な気持ちになってしまう。

 ちなみに、劇中で流れるルー・リードの楽曲「PERFECT DAY」はドラッグ中毒について歌った曲というのが通説であるが、これも実に皮肉的な内容の歌詞である。本作の平山の日常にこれが被さると少し残酷なものに見えてくる。

 監督、共同脚本はヴィム・ヴェンダース。
 ヴェンダースと言えば、小津安二郎を敬愛してやまないことで有名だが、所々に小津オマージュのようなカットが見られるのが興味深かった。例えば、平山の部屋を捉えたローポジションのカットなどは正に小津的である。

 また、平山を演じた役所広司の温もりに満ちた眼差しには、小津作品の常連・笠智衆が連想させられた。飄々とした表情にユーモアを滲ませながら、人間味あふれる人物像を見事に創り上げている。繊細で懐の深い演技が堪能できるという意味では、本作は正に役所広司を代表する1本になっていると思う。

 撮影も見事だと思った。平山が住むアパートは東京の下町にあり、すぐ傍には東京の新たなシンボル、スカイツリーが立っている。雑多な下町と近代的な高層ビル群の対比が画面に良いアクセントをつけている。
 また、渋谷のユニークな公衆トイレはガジェットとしての面白みに溢れており、浅草地下のディープな飲み屋街や場末のスナック、古本屋、コインランドリー、銭湯等、昭和の匂いを感じさせる風景も面白い。前川つかさの漫画「大東京ビンボー生活マニュアル」のような趣が感じられた。
 かつて「東京画」(1985西独米)でパチンコ文化をフィーチャーしたヴェンダースだけあって、今回も通り一辺倒な有名観光地ではなく、敢えてマニアックなスポットを選定したセンスが素晴らしい。
[ 2023/12/31 00:54 ] ジャンル人間ドラマ | TB(0) | CM(0)

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