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ボーはおそれている

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「ボーはおそれている」(2023米)星3
ジャンルサスペンス・ジャンルコメディ
(あらすじ)
 極度の不安に駆られ常に怯えながら生活している孤独な中年男ボー。彼は離れて暮らす母の元に帰省しようとしていた。ところが、予期せぬトラブルに見舞われ帰れなくなってしまう。その後、母が急死したことを知りショックを受ける。失意のボーは母の葬式に駆けつけようとするのだが…。
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(レビュー)
 母親の葬儀に駆け付ける孤独な中年男の旅をシュールに綴ったブラックコメディ。

 ボーを演じたホアキン・フェニックスの妙演に尽きる作品だと思う。
 彼は常に強迫観念に苛まれながら怯えて生きている。その原因は自分を束縛する母親にあるのだが、そんなマザコン男をホアキンが終始”困り顔”で演じている。様々な理不尽な目に遭いながら奔走する姿が強く印象に刻まれる作品である。

 個人的にはポン・ジュノ監督の「母なる証明」(2009韓国)を連想した。主人公の母親に対する複雑な愛憎の念、息子を溺愛する母親の狂気は両作品に共通する所である。いずれもシビアな結末を迎えるが、そこも含めて本作には母性が大きくフィーチャーされているような気がした。

 監督、脚本は「ヘレディタリー/継承」(2018米)「ミッドサマー」(2019米スウェーデン)のアリ・アスター。
 いわゆるジャンル映画から出てきた作家であるが、コメディやホームドラマ的な要素を取り入れながら独特の作風を貫く個性派である。今回も基本的には母子愛から派生するホームドラマで、作品のテイスト自体はサスペンスである。ただ、要所で癖のあるコメディ的な演出が横溢し、一筋縄ではいかない作品となっている。

 また、今回は現実なのかボーが見ている妄想なのか判別できないようなシーンがたくさん出てくるので、これまでのような分かりやすい映画にはなっていない。ルイス・ブニュエルの映画のような少し不気味で可笑しいシュールさが常に漂っており、例えばボーが住む荒廃したスラム街や中盤に登場する旅一座等は余りにも荒唐無稽で現実離れしている。こうした非現実的な世界観や登場人物たちは前作「ミッドサマー」の中にも見られたが、今回は更に奔放に進化しているように見えた。

 そんなシュールでナンセンスな本作だが、特に印象に残ったのは終盤の屋根裏のシーンだった。”アレ”の意味するところは色々と解釈できるだろうが、それにしても余りにもダイレクトな表現に笑ってしまった。穿って見れば、あのシーンはボーが自分自身を見て卒倒しているようなものである。こんなシチュエーションを考え付くアリ・アスター監督の感性は、やはりぶっ飛んでいるとしか言いようがない。
 また、母の死を知った後でボーは心を落ち着かせようと入浴するのだが、このシーンも傑作だった。どうしてそこに?という意味不明さに笑いがこぼれてしまった。
 更に、ラストに至るシークエンスも良い。ネタバレを避けるために書かないが、これほど人を食ったオチもそうそうないだろう。しかも、映画の冒頭に繋がるような円環構造を取ることによって、ボーの地獄は永遠に終わらないという意地の悪さが感じられる。

 欲を言えば、約3時間というランタイムはさすがに長すぎるので、もう少しシナリオの錬成が欲しかったか…。
 悪夢の追体験映画としてマーティン・スコセッシ監督の「アフター・アワーズ」(1985米)やテリー・ギリアム監督の「未来世紀ブラジル」(1985英米)を連想したのだが、それらに比べるとエンタメ作品としてはやや冗長に感じられてしまう。
 ボーは旅の途中で様々な人物と出会っていく。これは彼が母親の元を離れて新たな家族の一員になっていく暗喩になっているのだが、外科医の娘や心を病んだ帰還兵、旅一座のエピソードは、果たしてどこまで描くべきだったのかという疑問も持った。
 また、劇中にはアニメーションも登場してくる。「オオカミの家」(2018チリ)のクリエイターが手掛けており、これ自体は大変魅力的なのだが、若干展開を鈍らせてしまった感は否めない。
[ 2024/02/24 00:56 ] ジャンルサスペンス | TB(0) | CM(0)

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