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オッペンハイマー

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「オッペンハイマー」(2023米)star4.gif
ジャンル人間ドラマ
(あらすじ)
 第二次世界大戦下、アメリカはナチス・ドイツに先駆けて原子爆弾を開発することを目標に極秘プロジェクト“マンハッタン計画”を始動させる。天才物理学者ロバート・オッペンハイマーは、そのリーダーに任命され、ニューメキシコ州のロスアラモスに研究所を建造し原爆開発に邁進していく。
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(レビュー)
 ”原爆の父”と称されたアメリカの物理学者ロバート・オッペンハイマーの実像に迫った伝記ドラマ。

 オッペンハイマーについてのドキュメンタリーを事前に見ていたので、ある程度知識は入っていたが、改めて本作を観ると彼の苦悩や周辺人物、マンハッタン計画の実情というものが具体的に分かって興味深く観ることが出来た。

 原爆の恐ろしさを、その開発チームの視点を通して描くという野心的な試みが実に大胆である。
 と同時に、彼等を取り巻く権力の恐ろしさも実感される作品であった。本作はオッペンハイマーという個人のドラマであるが、その背後には常に権力が付いている。彼らは第二次世界大戦で核兵器を使用し、冷戦下で核開発競争をエスカレートさせていった。このまま進めば人類は破滅しかねない。そんな未来に対する警鐘も感じられた。

 ただ、映画としては、いささか捻った作りになっているため万人向きとは言い難い。
 物語はオッペンハイマーの聴聞会と、適役となる原子力委員会委員長ストローズの公聴会をクロスさせながら、原子爆弾の開発とその後のドラマを回想形式で描くという構成になっている。登場人物の多さも相まって、全てを理解するのは難しい。

 今作には原作(未読)がある。それを「TENET テネット」(2020米)「ダンケルク」(2017英米仏)「インセプション」(2010米)等のクリストファー・ノーランが製作、監督、脚本を務めて撮り上げている。果たして原作はどういった内容なのか分からないが、時間軸や世界観を複雑に交錯させた作りを得意とするノーランだけに、今回も一筋縄ではいかない難物となっている。きっとノーランはこういう作劇手法を意識的に取り入れることで作家としてのスタイルを標榜したかったのだろう。普通に時系列に描いても伝記映画としては何らそん色ない仕上がりになっていたと思うが、敢えて複雑な構成にしたあたりが如何にもノーランらしい。

 とはいえ、この作劇手法がサスペンスやドラマチックさを生んでいるかと言えば、今回に関してはそれほど効果をあげているとは思えなかった。本作は基本的にはオッペンハイマーの主観に寄った作りになっている。これなら時系列で描いたほうが、よりエモーショナルな物語になったのではないだろうか。
 ストローズの公聴会を描くモノクロパートは戦後の赤狩りをテーマにしており、言わばオッペンハイマー失墜の重要な一コマである。これも時系列で描けば、物語の抑揚が明確になり成功と転落という伝記映画の定石にハマったかもしれない。

 ただ、逆に言うと、この複雑な構成のおかげで、3時間という長丁場も飽きずに観れたという気もする。
 モノクロとカラーを使い分けた映像演出、中性子や核分裂をイメージした短いカットイン等、凝りに凝った編集も面白く、思いがけず3時間という上映時間が苦にならなかった。

 印象的だったのは、聴聞会にかけられたオッペンハイマーが、妻キティの「何故あなたは戦おうとしないの?」という糾弾に沈黙を決め込む姿だった。彼の中では科学者としての探求心が図らずも大量殺りく兵器を作ってしまった”後ろめたさ”があったに違いない。だからこそ”殉教者”として沈黙を続けた。しかし、赤狩りで周囲の関係者が次々と自分を裏切り、原爆以上に恐ろしい水爆の開発に邁進する世界を目の当たりにし、ついに黙っていられなかったのだろう。最後に戦う姿勢を見せた。そこに自分はオッペンハイマーのジレンマを見た。

 ノーラン作品と言えば、IMAXカメラにこだわった映像も見所の一つである。本作では中盤のトリニティ実験が大きな見せ場となる。この臨場感と迫力はぜひ映画館で味わいたい。
 また、オッペンハイマーが実験の成功を祝って演説するシーンも印象に残った。彼の主観による幻視的な映像演出が秀逸で、喜びと恐怖が入り混じった混沌とした心情を見事に表現していると思った。

 オッペンハイマーを演じたキリアン・マーフィの好演も見事であった。特殊メイクを施した造形もさることながら、聴聞会における繊細な感情表現も実に巧みであった。
 共演陣も実に豪華で見応えがある。
 オッペンハイマーの盟友となるアーネスト・ローレンス役でジョシュ・ハートネットを久しぶりに見た。以前よりも大分ふっくらとした体形で驚かされた。ちなみに、先述したドキュメンタリーではオッペンハイマーと袂を分かつように紹介されていたが、ここではそこまで仲違いするようなことがなかった。一体どちらが正しいのだろう?
 久しぶりと言えば、アインシュタインを演じたトム・コンティも随分久しぶりに見た気がする。
 恋人ジーンを演じたフローレンス・ピューは、先日観た「DUNE 砂の惑星PART2」(2023米)と全くイメージが異なり、これにも驚かされた。ただ、彼女の役柄についてはドラマ上どこまで必要だったのか疑問に残る。やや中途半端な扱いで勿体なく感じられた。
[ 2024/04/04 00:55 ] ジャンル人間ドラマ | TB(0) | CM(0)

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