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イマジン

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「イマジン」(2012ポーランドポルトガル英仏)star4.gif
ジャンルロマンス
(あらすじ)
 リスボンの視覚障がい者施設に“反響定位”という指導を唱える盲目の男イアンが赴任する。白杖を使わなくても自由に歩き回れることを実践してみせるが、施設側はこれを危険視し困惑するばかり。そんな中、部屋に引きこもりがちだった女性エヴァはイアンの話に興味を持ち始める。
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(レビュー)
 視覚障がい者の診療所にやって来た指導者とそこに住む人々との交流を繊細に綴った作品。

 大変ユニークな題材を取り上げた作品だと言える。視覚障がい者を主人公にした映画はたくさん観てきたが、ここに出てくるイアンが提唱する”反響定位”という理論は初耳だった。映画を観終わって調べてみたが、この方法は実際に視覚障がい者が普通の日常生活を送れるように運用されているということである。
 要は周囲の反響音を把握することで物体との距離を掴めるということなのだが、映画を観ていると分かるが、中々そう簡単には習得できないようである。しかし、訓練を積んでいけば白い杖を使わなくても自由に歩けることができるというのだから凄い話だ。本作のイアンも杖を持たずに街に出たり、店で買い物をしたりしていた。

 ただ、イアンのこの指導法は危険を伴うとして、診療所側は否定的な見方をする。子供たちに杖なしの暮らしをさせてあげたいと願うイアン。彼の指導法を止めようとする施設側。その対立が物語の縦軸となる。

 一方、物語の横軸には、イアンとエヴァの間に育まれるささやかなロマンスが配されている。イアンは部屋に閉じこもりがちな彼女を外に連れ出し、今まで知ることのなかった世界を体験させていく。初めは不安でどうしようもなかったエヴァだが、イアンの助けを借りながら退屈でつまならい日常から抜け出していくのだ。その中で二人は徐々に親密度を上げていく。

 バスに轢かれそうになったエヴァをイアンが抱きしめて助けるシーンは、余りにもベタであるが、中々ロマンチックで良かった。作中で二人が最も接近するシーンではないだろうか。本作にはこれ以上、二人が距離を近づける場面はない。実にプラトニックで、これが二人の恋愛を慎ましいものにしている。

 そして、本作のモチーフとなっている”反響定位”の理論を鑑みれば、人間同士の距離も想像力と知覚の上に成り立つものなのではないか…ということに気付かされる。
 近くにいても心は離れている場合はあるし、逆に離れていても心は近くにある場合だってある。人間関係とは実に奇妙なもので、本作を観ると改めてその不可思議さについて考えさせられた。

 監督、脚本は本作が初見の作家である。野心的なテーマ同様、観客に視覚障がい者の世界を疑似体験させるような大胆な演出が施されていて中々面白いと思った。

 例えば、イアンは施設の子供たちに靴の音を聞かせて、それが男のものか女のものか、当てさせるゲームをする。画面上では靴を見せないので、まるで観客も一緒になってこのゲームに参加しているような感覚になった。
 あるいは、エヴァを連れて外に出るシーンでは、カメラは車が激しく往来する道路を横切るイアンの背中を捉える。周囲の道路の状況をまったく見せないので非常にハラハラするが、これも視覚障がい者の見えない世界を疑似体験させようという演出意図だろう。彼らが外の世界に出ることの恐怖と不安を見事に表現していると思った。

 また、音の演出も秀逸である。鳥のさえずり、風の音、遠くに聞こえる汽笛や鐘の音、車の騒音等、繊細な音の設計も見事であった。

[ 2024/04/16 00:48 ] ジャンルロマンス | TB(0) | CM(0)

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