最後までクオリティが落ちなかったところはさすがに山田洋次。良いシリーズでした。
「十五才 学校Ⅳ」(2000日)
ジャンル青春ドラマ
(あらすじ) 中学三年生の大介は不登校児。屋久島の縄文杉を見に一人旅に出る。道中、様々な人に出会いながらヒッチハイクを重ねていく。ある日、シングルマザーの長距離女性ドライバーに拾われた。彼女は引きこもりの息子を抱えながら、日夜トラックを運転していた。大介はそれを見て少しだけ自分を顧みる。そして、彼女の息子と打ち解けていくのだった。束の間の温もりを後に、彼は再び屋久島へ向けて出発するのだが‥。
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(レビュー) 山田洋次監督の「学校」シリーズ4作目にして最終章。不登校の少年の心の成長を綴った爽やかなロードムービーになっている。今回は引き篭もりや老人介護といった社会問題を扱っているところが興味深い。
このシリーズは回を追うごとに、学校という舞台からはみ出しながら連作されていったように思う。今回は序盤と終盤のシーンに学校が登場するだけで、あとは全てオールロケーションによる旅の描写となっている。
ただ、形としての学校は出てこなくても、やはり本作はれっきとした学校を舞台にした映画だと思う。
そもそも学校の定義と何だろうか?学問を学ぶ場所、人間関係、職業スキル、その後の人生に役立つものを学ぶ場所が本来の学校の定義だと思う。今作の旅も正に人生を学ぶ学校と言える。つまり、年齢に関係なく、夫々の人に夫々の学校がある。山田洋次監督は、このシリーズを通してそのことを伝えたかったのではないだろうか?
「可愛い子には旅をさせろ」という言葉があるが、この映画から得られる感想も正にそれに近い。
机に向かっているだけでは得られない、人の温もりや自然の厳しさといったものを大介は、この旅を通して直に感じ取っていく。旅で出会う人が皆性善説に基づいている所に多少引っかかりを覚えるが、ともかくこの一人旅は大介を一回りも二回りも大きく成長させていく。
以下の二つのエピソードが興味深かった。
一つ目は、大介が自分を見つめなおすきっかけとなる引きこもり青年との友情エピソードである。大介は彼に自分を投影し、心配する母の姿を見ることで家族愛を知っていく。
もう一つは、家族に捨てられた孤独な老人のエピソードである。ここでは反対に家族の絆がいかに空しいものかを知る。そして、大介は老人に対する慈愛の精神を芽生えさせていく。
人は愛を知り愛に裏切られることで成長するものだと思う。この二つのエピソードはそれを端的且つ感動的に物語っていると思う。実に見事なプロットと感心させられた。
むろん、ただ美辞麗句を並べただけでは嫌味に写ってしまうだけである。山田洋次はその点をさすがに弁えていて、ラストの大介のセリフを”小さな自己主張”に留め慎ましい幕引きをしている。このあたりの殊勝さは実にしたたかであった。