蜘蛛女モナのキャラクターとプロットは秀逸。
「蜘蛛女」(1993米)
ジャンルサスペンス
(あらすじ) 地元マフィアと内通する汚職刑事ジャックは裏金を溜め込み、妻に隠れて不倫を重ねる日和見な男である。ある日、ロシア・マフィアの女ボス、モナを護送する役目を負う。敵対する地元マフィアの命令で彼女を売り渡そうとするが、隙を突かれて逃げられてしまった。こうしてジャックは地元マフィアと警察の両方から追われることになる。
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(レビュー) 女マフィアに翻弄される刑事の恐怖を乾いたタッチで描いたサスペンス作品。
「蜘蛛女」という邦題に見世物小屋的な怪しさが漂うが、これはロシア・マフィアの女ボス、モナのことを指している。彼女は一度狙った獲物は絶対に逃がさない。蜘蛛のように糸で絡み捕って食い殺してしまう恐ろしい女である。「蜘蛛女」という邦題は言い得て妙である。
不倫と汚職にまみれたジャックの転落は自業自得、同情の余地無しであるが、モナのモンスター振りが余りにも強烈過ぎて、かえって気の毒に見えてくる。モナのキャラクターは「白いドレスの女」(1981米)のK・ターナーや、「危険な情事」(1987米)のG・グローズ等、この手のファムファタールの傑作と並び表されても良いくらいのインパクトがある。
特に、自分の代わり身を仕立てるシーンはすごい。まさか自分の××を×××するとは‥。このシーンに限らず、意外な展開がふんだんに盛り込まれておりプロットはよく練られていると思った。
また、中盤以降の展開も見事である。シーンの繋ぎ目を極力カットし、ジャックのモノローグだけで引っ張り、正に悪夢を見ているような感覚に襲われた。やや倒錯的な世界に埋没し過ぎという気がしなくもないが、そのままクライマックスまで目が離せなかった。
最後はセンチメンタリズムに締めくくられていて、これも味わい深かった。
このラストは見ようによっては二つの解釈が出来ると思う。というのも、その直前のシーンで何発の銃弾が発射されたか?その捉え方次第で、現実なのか夢なのか判断が分かれるからである。個人的には後者の意見なのだが‥。
尚、原題の「Romeo Is Bleeding」はトム・ウェイツの曲である。本人がチョイ役で顔を出していたのはその関係からだろう。