肉体的精神的オーバーロードで哀川翔がトンデモないことに‥
「極道恐怖大劇場 牛頭」(2003日)
ジャンルコメディ・ジャンルホラー・ジャンルサスペンス
(あらすじ) 関東ヤクザの若頭尾崎は、チワワを見ればヤクザ犬だと言って撲殺したり、最近奇行が目立っていた。身の危険を感じた組長は、部下の南に尾崎を名古屋の挨拶回りに連れて行くよう命じる。実は、挨拶回りというのは名目で、裏では尾崎を始末することが仕組まれていた。ところが、それを知らない南は道中、誤って尾崎を死なせてしまう。更に死体が忽然と姿を消し‥。南は尾崎の死体探しに奔走することになる。
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(レビュー) 兄貴分の死体を探し回るうちに奇妙な世界に迷い込んでいくヤクザを、シュールに描いたスラップスティック・コメディ。
監督は鬼才・三池崇史。彼らしいブラックテイスト全開な作品である。プロットより、場面場面における”勢い”を優先した作りは、まっとうなドラマを求めてしまうと完全に裏切られる。南が遭遇する怪現象にも理解不可能なものが多い。
例えば、古ぼけた旅館の女店主とその弟のSMプレイや搾乳プレイ、オカマが経営する喫茶店でコーヒーに茶碗蒸しがデフォルトでついていたり、そこに居合わせる客が毎日同じ顔ぶれだったり、極めつけは死んだはずの尾崎から手紙が届いたりetc.挙げたらきりがないくらい意味不明なシーンが出てくる。南はこれらの珍妙な人物達と事象に翻弄されながら、行方不明になった尾崎の死体を探し歩いていく。
おそらく三池監督の狙いとしては、D・リンチの映画のような迷宮世界における奇妙な冒険騨を描きたかったのではないだろうか。
本作の舞台となる名古屋は完全に狂ったカオスな世界観として描かれている。これは正にリンチ映画における都市伝説的異郷の地と重なるものだ。例えば、本作のオカマが営む喫茶店は、「ツイン・ピークス」や「マルホランド・ドライブ」(2001米仏)に登場するコーヒーショップのごとく、めくるめく迷宮世界の入り口のように存在している。
また、尾崎が途中でああいう姿になってしまうのは、「ロスト・ハイウェイ」(1997米)の主人公の入れ替わりと同じで、観客を煙に巻く一つのギミックと取れよう。確かに意外性はあるが、オカルトとして片付ければ何でもありなわけで、少し卑怯な感じもしたが‥。
他にも、リンチ映画を髣髴とさせるシーンが色々と見つかる。
アブノーマルで倒錯的な性交描写は「ブルーベルベット」(1986米)のレイプシーンのようでもある。
このように今回の三池監督は、リンチの悪夢的な迷宮世界を超えちゃる!的なノリで、脳内妄想を炸裂させている。
したがって、ノリと勢いだけで作られているような所があるので、ドラマが破綻してしまうのも無理はない。個々のシーンをコントのように見ればそれなりに楽しめる作品だが、ドラマとして見てしまうとかなり苦しい。
ちなみに、一番笑ったのは石橋蓮司が演じるお玉を愛好する組長だった。