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愛のむきだし

強烈な長さ、強烈なインパクト。このパワーに圧倒された。
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「愛のむきだし」(2008日)star4.gif
ジャンルロマンス・ジャンルコメディ・ジャンルアクション
(あらすじ)
 クリスチャン一家に生まれたユウは、幼い頃に母を亡くし敬愛する父と仲良く暮らしていた。高校生になった頃、サオリという女が現れて父は神の道を踏み外してしまう。ユウは元の父に戻って欲しいと願うが、その声は届かなかった。ならばと、父の愛を欲する余り彼は盗撮の罪を犯していくようになる。盗撮に歯止めが利かなくなっていく中、彼は不良少女ヨーコと出会う。亡き母の形見であるマリア像にそっくりな彼女にユウは初めて恋をする。
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(レビュー)
 盗撮マニアの少年の波乱万丈な純愛をダイナミックに綴ったエンタテインメント・ムービー。上映時間237分という大作だ。

 「アラビアのロレンス/完全版」(1988英)や「風と共に去りぬ」(1939米)といった4時間近くの大作は、莫大な制作費と巨大なスケール感で人生の大河を綴ったものだが、同じ4時間でも本作はミニマムな世界観と小規模なバジェットで撮られた作品である。両者を同じ土俵で語ることは出来ないが、エンタテインメントに徹しているという点では共通している。もっとも、本作はバカ映画的なエンタテインメント志向に特化している。しかし、だからといって下劣、しょーもない、と一蹴することは出来ない。見応えのある4時間だった。

 この映画は笑いと性愛と暴力という娯楽の三大要素を、ごった煮にして見る側に突きつけてくる。このサービス精神は見事だ。R指定なので際どいシーンも出てくるが、娯楽に徹しているからこその過剰であり、このあたりの”やりすぎ感”は女性よりも男性の心をくすぐるような気がした。そもそも、”勃起”をここまでフィーチャーした映画がこれまであっただろうか?正に”男の子”のための映画と言えよう。

 一応実話をベースにしているらしいが、かなり破天荒なシーンが登場してくるし、突っ込みどころも多い。盗撮少年の青臭い純愛ドラマは実話だろうが、語り口は異様なまでに過剰で、言ってしまえば見世物小屋的でフィクショナルな装飾が施されているように思えた。
 世間に広がるカルト宗教の恐怖にしても、社会的な問題として一定のリアリティは持っているが、その描写の仕方は戯画的で、物語の根幹であるユウとヨーコの純愛をドラマチックに盛り上げるための一つの素材として捉えられる。

 ここで愛と宗教につい少しだけ考えさせられた。
 この二つは実はよく似ていると思う。愛は人を盲目にすると言うし、宗教も神という絶対的な存在の前では信者は心を殺してしまう。ポジティヴに捉えれば両方とも崇高で人生においては極めて普遍的なものに思えるが、裏を返せばこれほど恐ろしいものはない。
 物語は章立て構成になっていて、ユウ、コイケ、ヨーコという主要3人のキャラの視点で語られている。夫々のエピソードにおいて、愛と宗教は次のように登場する。

 ユウは父の求愛のために”ヘンタイ”とされる盗撮趣味に走るが、運命の少女ヨーコと出会うことで真の愛に目覚める。しかし、彼の求愛は拒絶され、挙句の果てに盗撮王子としてカリスマに祭り上げられていく。神に仕える者、愛に命をかける者としては実に悲劇的なことだ。愛と宗教に滅ぼされる純真な少年の残酷な運命がここでは、はっきりと見て取れる。
 一方、コイケは父の虐待によって荒んだ青春を送り、そこをカルト宗教に拾われのめり込んでいくようになる。彼女は愛に裏切られ宗教に狂っていった少女だ。ちなみに、ユウとコイケは原罪を抱える者同士、根っこの部分では一緒である。コイケはユウを自分のモノしようとするが、やがてその愛は近親憎悪的な心理へ流れていく。このあたりの変化は狂気的で面白い。
 そして、ヨーコであるが、彼女もコイケと同じように父による虐待というトラウマを持っている。しかし、彼女は直接宗教にのめり込んで行くのはなく、父の幻影から逃れるようにレズビアンになっていく。ユウの求愛で立ち直るチャンスはあったものの、余りの”ヘンタイ”振りに、結局はコイケと同じように宗教に狂っていくようになる。

 愛と宗教は、人間を破滅させることもある恐ろしいモノであることが分かる。この映画はそれを4時間近くかけて描いているのだ。そして、最後の最後に破滅からの再生というカタルシスを描くことで、見事に胸のすくようなエンタテインメントへと昇華されている。これには気持ち良く乗っかることが出来た。

 演出はチープなものもあるが、そこはある程度確信犯的にやっているものと思われる。その一方で、人物の吐露にシリアスに迫る描写も見られ、俳優の肉体、演技を漏らさずキャッチした熱度の高い演出も見られる。映画そのものがまるで息づいているように生き生きとしているのは、この熱度の高い演出のおかげだろう。ちなみに、第1章のタイムリミット演出は痛快であるし、第2章のスピーディなカットバック演出は刺激的で痺れた。

 主要3人のキャストは、キャリアこそ少ないものの夫々に好演していると思った。特に、ヨーコを演じた満島ひかりは魅力的であった。古来のパンチラアクションを惜しげもなく披露し、レズビアン描写にも果敢に挑んでいる。中々の役者根性だと思う。
[ 2009/04/03 01:35 ] ジャンルロマンス | TB(0) | CM(1)

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[ 2009/04/03 10:37 ] [ 編集 ]

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