「ライブ・フロム・バクダッド 湾岸戦争最前線」(2002米)
ジャンル戦争・ジャンルサスペンス
(あらすじ) 1990年8月、イラクのバクダッドにCNNの敏腕プロデューサー、ロバートが撮影クルーを引き連れてやってくる。フセインの取材を申し込むが情報省の門は固く閉ざされた。一方で、ライバルの大手CBSは難なく取材権を獲得した。落ち込むロバート達だったが、そこに朗報が届く。情報省があることを条件にフセインの単独インタビューを許したのである。早速、準備に取り掛かるクルー達。しかし、その頃アメリカではイラク侵攻の準備が着々と進められていた。
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(レビュー) 湾岸戦争が開戦したその日に、現場に残って生中継をしたCNN取材班の姿を描いたサスペンス作品。
今作は実話が元になっているというから驚きである。戦争の真実を伝えるために決死の覚悟で戦火の中をレポートする彼ら、ジャーナリスト達の勇気は賛辞に値する。逆に言うと、会社はよく彼等の滞在を許可したな‥という別の驚きもあった。尊い人命を視聴率と天秤にかけているわけで、これは実に怖い。
ところで、実話を映画にする際しばしば頭をよぎるのは、真実の脚色がどこまで許されるか?という問題である。脚色、つまり演出をし過ぎると嘘っぽく見えたり、せっかく良い話でも嫌味に見えてしまったりしてしまう。かといって、実話を変に意識し過ぎると映画としての面白みは欠けてしまう。このさじ加減、バランスは作り手としては大変悩ましいところだと思う。
さて、そこで本作なのだが、最初は主役であるロバートの言動がかなり軽薄に見えてしまい、実話にしては作りが安っぽいという印象を受けた。軍事国という緊迫した情勢を背景に、この男は事の重大さを理解しているのか?という不安が起こる。ロバートを演じるのはM・キートン。彼は元来コメディタッチを得意とする俳優なのでそれも止む無しだが、作品のジャンルを考えた演技をするのもプロである。それが余りできてないという印象である。
尚、「トレマーズ」(1989米)というB級モンスター映画をオープニングに持ってくるあたりで、何となく嫌な予感もした。「トレマーズ」は好きな映画だが、本作のようなシリアスな社会派作品の劇中映画として使用するのはどうだろう?このあたりのセンスも疑問である。
しかし、これらの不安は中盤に入ってくる辺りから徐々に払拭されていく。要所要所に取材班と情報省の政治的な駆け引きが描かれサスペンスが盛り上がっていく。クライマックス直前の英断にも安っぽさは感じられず、最終的には中々見応えある作品というふうに印象が変わった。
本作はTV用映画である。決して潤沢な予算は用意されてないだろうが、色々と工夫の跡が見られたのも好印象であった。例えば、クウェートの風景などは撮り方の上手さもあって余り安っぽさを感じさせない。全体的に映画のクオリティは劇場用作品くらいのレベルは十分保っているように思った。ただし、クライマックスの戦闘シーンだけはCGが丸分かりで興醒めしたが‥。