制約された条件でこのテーマは敷居が高すぎ。
「ブック・オブ・ライフ」(1998米)
ジャンルサスペンス・ジャンルSF
(あらすじ) 1999年12月31日。イエス・キリストとマグダラのマリアは、世界を破滅させる命の書(ブック・オブ・ライフ)を持ってニューヨークに降り立った。一方、悪魔はホテルのラウンジでイーディーという日本人女性に希望の光を見つける。そして、彼女に想いを寄せるデーブに宝くじを買えという。それが思わぬ奇跡を呼び‥。
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(レビュー) 現代のニューヨークを舞台にした神と悪魔の戦いと、一人の女性が起こす奇跡を寓話的ムードで綴った中編作品。
監督脚本はインディペンデント界で活動し続ける異才H・ハートリー。この監督の作品は前作「ヘンリーフール」(1997米)が好きなのだが、今回はドラマも作風もかなりラジカルな方向へ舵取りしている。悪く言えば、実験的な事をやろうとして、自己満足的な作品になってしまったという印象である。
映像は独特の色彩と構図から成り立っている。フィルターを駆使しながら不安を煽るような画面設計で、尚且つコマを落として残像を残すような映像になっている。世紀末という背景、神と悪魔の目から見たこの世の朧を表現すべく計算された演出だろう。スタイリッシュで面白い。
問題はそこに登場する数々のメタファーである。イエス・キリストとマグダラのマリア、そして悪魔といった登場人物が見るからにフツーの人間で、造形の面で精彩に欠く。ましてや、最も重要となる”命の書”がフツーのノートパソコンである。壮大なドラマを敢えてミニマムな箱庭に閉じ込めてしまうやり方は”あり”だと思うが、それはバカ映画のジャンルに許される方法論であって、変に小洒落たPV風の映像で表現する代物ではないと個人的には思う。中途半端に料理してしまったという感じだ。
バカ映画として成功している例で言えば、J・キャリー主演の「ブルース・オールマティ」(2003米)がある。ここに登場する神様は、かなりアクの強いキャラクターで皮肉も効いている。本作にもこのセンスがあれば‥と惜しまれる。