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グラン・トリノ

「ダーティーハリー」をこういった形で蘇らせるとは‥!
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「グラン・トリノ」(2008米)star4.gif
ジャンル人間ドラマ
(あらすじ)
 妻に先立たれた老人コワルスキーは愛犬と一緒に静かな余生を送っていた。長年勤めていたフォード社を辞めて、今は愛車グラン・トリノの手入れをするのが唯一の楽しみである。息子夫婦はそんな父を心配するが、彼は頑なに今の暮らしを守った。そんな時、事件が起こる。何者かが車庫に侵入してグラン・トリノを盗もうとしたのだ。犯人は隣に住むアジア系の少年タオだった。よくよく見れば純情でおとなしい少年だった。実はギャングをしている従兄の命令でやったと言う。この一件をきっかけにコワルスキーはタオと交流を深めていくようになる。
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(レビュー)
 無骨な頑固爺と純情な移民少年の友情を綴った作品。

 監督・主演はC・イーストウッド。彼の最近の製作ペースは目を見張るものがある。先頃見た「チェンジリング」(2008米)の次に撮ったのが本作である。1年に2本のペースで、しかも両方とも完成度は水準以上。粗製乱造にならないところが凄い。

 前作「チェンジリング」と比べると、製作方法に大きな違いが見られるのが興味深い。
 「チェンジリング」は実話をベースにしたドラマで、20年代の空気感を緻密に再現した完成度の高い作品だった。それに比べると「グラン・トリノ」はかなりミニマムな映画になっている。無名の俳優を起用したり、自然光を基調としたり、「チェンジリング」とは正反対でラフな作りになっている。肩の力を抜いて撮った‥そんな印象を持った。これは決して手抜きということを言っているわけではない。むしろ、身近で周縁なドラマを描く上では、こうした素朴なやり方は合っているとも言える。

 物語自体は、孤独な老人と少年の擬似親子的な友愛を描くものであり、一見するとどこにでもありそうなドラマである。しかし、そこにアジア系移民の問題を絡めてきたのは目新しいと思った。
 ご存知の通り世界市場における中国の躍進は目覚しいものがあり、それは超大国アメリカでさえも恐れるほどとなっている。アジア系移民であるタオには、そんな世界市場の”現在”を暗に忍ばせているような気がしてならない。そして、タオとコワルスキーの関係変遷に着目すると、イーストウッドがこの映画で何を訴えたかったかのかという事がよく分かる。

 コワルスキーは過度の人種差別主義者で、最初はタオのことを邪険にする。彼は朝鮮戦争に出征した過去があり、その時の思い出が今でも彼の精神を苦しめ、彼らアジア人たちへの偏見に繋がっているのだ。ところが、タオの人懐っこさ、純真さに惹かれ、コワルスキーは次第に心のわだかまりを解いていく。そして、タオと擬似親子のような関係で結ばれていく。この擬似親子の関係には人種差別の愚かさ、ひいては今のアメリカと中国の緊張関係に対する皮肉が見えてくる。
 こうしたシニカルなメッセージは、ここ最近のイーストウッド映画の大きな特徴と言える。彼が何故、わざわざこの映画にアジア系移民を登場させたのか。そこには現代のアメリカの”対アジア”という問題を暗に示したかったからなのだと思う。

 全体的な演出は実直な作りで好感が持てた。前半はクスクスと笑えるシーンがあり和やかに見ることが出来た。終盤は一転して、テーマの核心に迫るべくシリアスなトーンに傾倒していく。

 ただ、細かい部分で幾つか引っ掛かる部分もあった。
 例えば、コワルスキーが住むホームタウンとギャングのアジトの物理的な距離感の曖昧さが、クライマックスにおける時間経過の不自然さに繋がっている。そもそも、どうやってコワルスキーは彼等のアジトを知り得たのだろか?それも分からない。また、××されたスーが帰宅する方法にも違和感を覚えた。ここは徒歩の方が惨めさが増して断然良い。他にも幾つか引っ掛かる部分はあった。

 しかし、このような幾つかの些細な疑問点や不満点はあるものの、今作は間違いなく近年のイーストウッド作品の中では傑作の部類に入る作品であると断定できる。何と言っても、ラストが良い。恥ずかしながら、気持ちを全てここで持っていかれてしまった。俳優イーストウッドの集大成を見た思いがして感涙してしまった。
 また、今作には明らかに「ダーティーハリー」(1971米)のセルフパロディー的な側面もあるように思う。懐に手を入れるぐさには自然と胸が高鳴ってしまった。
[ 2009/05/01 01:58 ] ジャンル人間ドラマ | TB(0) | CM(0)

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