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スラムドッグ$ミリオネア

ここ最近のアカデミー賞作品は納得いかなかったが、今回は満足の出来。
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「スラムドッグ$ミリオネア」(2008英米)星5
ジャンルロマンス・ジャンルコメディ
(あらすじ)
 インドのムンバイ。スラム出身の無学な青年ジャマールは、人気クイズ番組で不正をはたらいた容疑で逮捕される。本当にクイズの答えを知っていたと取調官に訴えるが信じてもらえない。そこで、ジャマールは自分が辿ってきた壮絶な人生について語りだす------母親を殺されたジャマールは兄サリームと孤児になる。ラティカという少女と出会い恋に落ちるが、孤児を食い物にする悪徳犯罪組織によって二人は引き離されてしまった。愛するラティカに再び会いたい‥その一心でジャマールはサリームと盗みや詐欺をはたらきながらスラム街を逞しく生き延びていった。数年後、ようやくラティカの居場所を突き止めるのだが‥。
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(レビュー)
 インドのスラム街で育った少年少女の純愛を疾走感溢れるタッチで描いた作品。

 ボリウッドという造語があるくらい、インドでは世界で一番多くの映画が作られている。インド映画で思い出されるのが、歌あり、笑いあり、ロマンスありのごった煮映画、マサラ・ムービーである。この「スラムドッグ$ミリオネア」は、正にマサラ・ムービーをハリウッド流にアレンジしたような作品だ。今後の潮流になるかどうかは別として、ハリウッドが映画大国インドに舞台を求めた‥という意味では画期的な作品だと思う。

 理想と夢を謳う甘ったるいご都合主義と卑下されるハリウッド映画だが、1930年代の映画黄金期を支えたのは名実共にハリウッドだった。本作も正にそれを地でいくようなドラマである。ご都合主義という面はあるが、寓話として割り切った上でなら楽しめる作品だと思う。最近こういった娯楽作品に飢えていたということもあり面白く見れた。

 暴力と退廃に満ちた過酷なインドのスラム街に着目しているが、その描き方は実にスタイリッシュで、ある種”御伽の国”のようにも見える。複雑に絡み合う宗教問題、急成長を遂げる社会と経済、そういった背景は軽い描写に留められている。シリアスに切り取ることで実情を訴える社会派的な作品は他にもあるが、本作はそれとは真逆のアプローチを取っている。スラム街の舞台はあくまでサクセス・ストーリーのプレマイズとして存在するに過ぎない。内側からの視点、つまりインドからの視点では中々こういった撮り方は難しかろう。外からの視点、つまり夢と理想を謳うハリウッド主義ならでは‥という気がした。

 映画はエネルギッシュで高揚感に満ちている。このあたりはマサラ・ムービーと共通している。監督はD・ボイル。躍動感と疾走感溢れる映像は彼の作品の一つの特徴であり、今回はブレイク作「トレインスポッティング」(1996英)以来の”切れ”を見せている。ここ最近は今ひとつパッとしなかったが、敢えて原点に返るかのような若々しさに驚かされた。

 また、ドラマ構成も中々見事である。映画は時制の異なる3つのエピソードを交錯させながら軽快に展開されている。全体的にバラバラな印象は無く、3つのエピソードはジャマールの視座が固定されているため”まとまり”感があり明快で見やすい。そして、各エピソードが収束していくクライマックスは”転落”と”上昇”の対比がドラマチックな効果を上げカタルシスも満点だ。

 プロットも面白い。スラム少年の成長と初恋の成就と聞けば、サクセスストーリーとしていたって凡庸に思えるかもしれないが、成功を実現させる舞台をテレビの人気クイズ番組「クイズ$ミリオネア」とした所が絶妙だ。日本でも放送しているので知っている人も多いと思うが、このクイズ番組は問題を一つずつクリアしていくことで賞金額がアップしていくというゲームシステムになっている。各問題をジャマールの回想人生に呼応させたアイディアがよく考えられている。また、解答者に予め与えられた3つのライフラインもドラマの中で効果的に使われている。このゲームに着目したアイディアが見事というほかない。

 ちなみに、タイトルが被るが同じD・ボイル監督の作品で「ミリオンズ」(2004英米)という映画があった。あちらは大金を手にした兄弟がそれをどうするか?という物語だったが、結末は少々ほろ苦いもので正直微妙な出来だった。今回も大金を巡って葛藤する兄弟のドラマ‥という側面を持っているが、結末に関してはこちらの方が好きである。
[ 2009/05/07 23:27 ] ジャンルロマンス | TB(0) | CM(0)

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