良く出来たストーリーで感心させられる。
「アヒルと鴨のコインロッカー」
ジャンルサスペンス・ジャンル青春ドラマ
(あらすじ) 大学生椎名は親元を離れて一人暮らしを始めることになった。アパートの隣の部屋には河崎という謎めいた青年が住んでいた。二人ともボブ・ディランの「風に吹かれて」が好きで、それがきっかけで交流が始まる。同じアパートにはもう一人、留学生のドルジが住んでいた。河崎が言うには、彼は最近失恋の痛手で引き篭もりになったらしい。ドルジを慰めるために、何故か窃盗を強制される椎名。その後、昔の河崎を知るペットショップ経営の女店主に出会い、椎名は彼女から意外な事実を聞かされる。
DMM.comでレンタルするgoo映画映画生活ランキング参加中です。よろしければポチッとお願いします!


(レビュー) 4人の男女の友情とロマンスをミステリー仕立てに綴った青春ドラマ。
映画は前半と後半で大きく切り分けられる。
前半は、椎名の視線を通して謎めいた隣人河崎を描くミステリー仕立のパート。不適な笑みを浮かべながら強盗計画を持ちかける河崎の何と胡散臭いこと‥。うっすらと狂気を隠し持っている風にも見える。ミステリアスな彼の人物造形が前半の大きな魅力である。
そして、中盤で出会うペットショップ経営の女店主の登場で、彼の正体は一通り解明されることになる。しかし、映画はここから更にもう一人の隣人、ドルジにまつわる謎を追いかけるサスペンスに転じていく。謎の後に更にもう一つの謎を‥という、見る側の興味を逸らさない作りに上手さを感じる。
前半だけ見ると謎だらけで悶々とするだけであるが、この映画の本番はここからだ。それまでのドラマは後半のための”種まき”に過ぎなかった事が分かる。そして、最後には「あぁ、なるほど‥」となり、複雑に絡み合った男女の友情と恋愛が叙情的に締めくくられている。「アヒルと鴨のコインロッカー」という奇妙なタイトルに込められた意味も良く理解できるし、正にしてやられたという感じである。
写真やボイスレコーダー、ディランの名曲「風に吹かれて」等、ミステリを引き立たせる小道具の使い方も中々巧みである。特に、「風に吹かれて」は要所要所に重要なテーマソングとしてかかってくるが、これはディラン信奉者である河崎にとってはバイブルのような曲であり、その歌詞は彼の人生を物語っているようにも聴こえる。彼の人生に哀愁を感じずにいられない。
本作の難を挙げるとすれば、主人公椎名のキャラクターが余りにも平凡過ぎることであろうか‥。彼が映画の語り部になるので、必然的に観客の視線と同一線上に存在することになる。角の立つキャラクターに出来ないということは分かるが、平凡すぎるところが彼の特徴と言われても、どうしてもそれだけでは魅力的には思えなかった。