fc2ブログ










ありふれた事件

DVDにならない作品というものがあって(理由は色々あろうが)、これから1週間ほどそういったものを取り上げたいと思います。
ありふれた事件 [VHS]ありふれた事件 [VHS]
(1994/08/26)
アンドレ・ボンゼルレミー・ベルヴォー

商品詳細を見る

「ありふれた事件」(1992ベルギー)星5
ジャンルサスペンス・ジャンルアクション
(あらすじ)
 連続殺人犯ブノワを追ったドキュメンタリー映画が作られることになる。カメラの前で次々と殺人を犯していくブノワ。やがて、資金が底をつくと撮影隊は共犯者となって躊躇なく強盗殺人を繰り返していくようになる。
goo映画
映画生活

ランキング参加中です。よろしければポチッとお願いします!

FC2ブログランキング
にほんブログ村 映画ブログへ人気ブログランキングへ


(レビュー)
 架空の連続殺人鬼を追ったフェイク・ドキュメンタリー。

 主演のブノワ、監督、カメラマンというたった3人で撮られたインディペンデント・フィルムだが、余りの生々しい凄惨な光景の連続に世界が驚愕したという曰くつきの作品である。3人の以後の新作はない。彼等が作り出す刺激的な作品をもっと見てみたいのだが‥。

 映画はブノワの凶行と周囲の家族や愛人の素顔を淡々と切り取りながら進んでいく。その中で、ブノワにとっての正義、社会観、趣味嗜好といった物が徐々に露わにされていく。そして、ドラマは後半で大きな転換を迎え、そこをきっかけに悲劇的な結末へと転じていく。
 後半あたりから作為性を感じる演出が氾濫し始めるのだが、ともかくもホンモノによく似せて作られたフェイク・ドキュメンタリーだと思った。

 もっとも、リアリティーがあるとはいえ、あれだけの大量殺人を犯しておきながら、近しい者を含め警察やマスコミの騒動といった社会性が完全に映画の世界から排除されているので、そこには”嘘っぽさ”を感じてしまう隙間がある。映画の中での出来事は完全に虚構の出来事として提示されており、生々しい光景もどこかで安心して見る事が出来るのも事実である。

 衝撃性だけが取り上げられる本作だが、随所に見られるブラック・ユーモアも中々面白かった。
 例えば、ブノワのために開かれた誕生パーティーのシーン。ブノワ自身の凶行によって和気あいあいとした場が一瞬にして凍りつくのだが、この時の鳩が豆鉄砲を食らったような周囲の顔が何とも可笑しい。笑いから恐怖のどん底へ叩き落される様は、丁度ドッキリカメラと同じで仕掛けになっていて、このギャップがブラックな笑いへと繋がっている。

 映像はモノクロで照明も一台しかないので、夜などの暗い場面は多少見づらいことがある。しかし、これが奏功し余計に作品に不気味さをもたらしている。また、一部で特殊撮影が使われているが、モノクロ映像が技術的な粗を上手く隠しているように思った。

 それと”音”に関してのリアリティ。ここにも卓抜したセンスが感じられた。
 中盤で銃撃戦の現場にカメラは突入して行くのだが、突然鳴り響く気色の悪い激音。その直後、画面が地面にへばりついて初めてカメラマンが撃たれた事が分かる。「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」(1999米)でも似たような演出があったが、こちらの方が断然ショックの度合い高い。効果音演出のためである。他にも、マイク集音の遠近感を利用することで、近いところの音を小さく、遠いところの音を大きくして現場の混乱振りを捉えるシーンもある。このあたりの音の演出にもリアリティが感じられた。

 ところで、この映画ではブノワの殺人動機については詳しく語られていない。単に金目当ての強盗殺人だったのか、疲弊した自らの人生に嫌気が差して自暴自棄になった結果だったのか。理由が分からない。そこが病んだ現代社会を物語っているようで怖かった。
 また、人を人と思わぬ冷淡な心理も不気味だった。ブノワは湖に死体を沈めるのにどれだけの重石が必要か論理的に考えている。子供のように軽い死体なら重石が少なく済むので手間がかからなくて楽だと言う。彼は自ら作ったオリジナル・カクテルに”グレゴリー坊や”と名付けて撮影クルーに振る舞うのだが、グラスの中味が重石をつけた死体が沈んでいるような、そんな見た目になっている。このネーミングから、彼は明らかに子供を湖に沈める行為と酒を飲む行為を頭の中でイコールで結び付けているのだろう。この思考には寒気が走った。
[ 2009/07/25 02:52 ] ジャンルサスペンス | TB(0) | CM(0)

コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://arino2.blog31.fc2.com/tb.php/437-0b8a6dfd