デヴリンが原作ファンから愛される理由がよく分かる。
「鷲は舞いおりた」(1976英米)
ジャンル戦争・ジャンルアクション
(あらすじ) 第2次世界大戦の最中、ドイツ軍ラードル大佐の元にイギリスのチャーチル首相誘拐の極秘指令が下される。チャーチルが毎年夏に訪れる保養地を絶好の舞台と見たラードルは、作戦の実行部隊を猛勇果敢なことで知られるシュタイナー大佐に一任した。ところが、彼はナチス親衛隊に反抗したかどで軍務を剥奪されていた。ラードルは急遽シュタイナーを訪れて作戦を伝える。元IRAの工作員デヴリンも仲間に加わり”イーグル作戦”は決行される。
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(レビュー) 第2次世界大戦下、ドイツ軍のチャーチル首相暗殺作戦を描いた戦争アクション作品。ジャック・ヒギンズのベストセラーの映画化である。
ドイツ軍の視点で描いたアメリカ映画というところが珍しい。最近ではT・クルーズ主演の「ワルキューレ」(2008米独)という作品もあったが(未見)、普通はナチス=悪と描くものである。それが本作はドイツ軍側を主人公にしている。
とはいっても、主人公であるシュタイナーは反ナチという設定なので、決して本作がファシズムを擁護する作品になっているわけではない。彼は冒頭でユダヤ人差別を嫌う人道主義者として登場し、部下から多くの人望を集めている。そして、戦場こそが我が生きる場所、という気骨溢れる猛者として描かれている。シュタイナーは決して悪人というわけではなく、誰もが感情移入できるような主人公としてきちんと作り上げられている。
ただ、実を言うと、俺が本作で一番印象に残ったキャラクターは彼ではなく、いち早く現地に潜入して作戦のお膳立てをした工作員デヴリンの方だった。
彼はアイルランド人の大学講師で、かつてIRAで諜報活動を行っていた人物である。潜入活動はお手の物で、そこを盟友ラードル大佐に見初められてイーグル作戦に参加することになった。演じるのはD・サザーランド。特徴のある風貌もさることながら、ちょっと癖のある皮肉屋気質、自らを”最後の冒険家”と称するお茶目なユーモアセンス等、実に面白いキャラクターになっている。彼はこのスリリングな作戦をどこか楽しんでいる風にも見えるのだが、それは彼の楽天的思考の表れであり、そこが見る側からすればスマートに写ったりもする。真面目なシュタイナーとのキャラクター・コントラストも面白い。
尚、デヴリンはヒギンズの小説では、作品を超えて登場する名物男で原作ファンからは人気が高いそうである。本作を見るとそれも何となく分かる気がする。
一方、本作で残念だったのは、戦争映画でありながらアクションシーンが余りにもお粗末だったことである。監督はJ・スタージェス。かつては切れのあるアクション作品をたくさん輩出した名監督だが、引退作となる今回はさすがに齢を感じずにいられない。往年のアクション演出の切れが見られず残念だった。
そもそも敵であるアメリカ軍が余りにも愚鈍で、高揚感や緊迫感に欠ける。せめて指揮官にそれなりの”器”があればまだ見応えがあっただろうが、シュタイナーと比べると能力の差は歴然。これではドイツ軍の強さを引き立てるためだけに存在しているようなものである。
ただし、ラストにどんでん返しが用意されており、終盤は中々スリリングに作られている。全体を引き締める意味でも、そこは救いであった。