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渚にて

近未来の核の恐怖を描いた反戦映画。地味だが味わい深い。
渚にて [DVD]渚にて [DVD]
(2006/11/24)
グレゴリー・ペックエバ・ガードナー

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「渚にて」(1959米)star4.gif
ジャンルSF・ジャンル人間ドラマ
(あらすじ)
  近未来、核戦争が起こり人類は絶滅の危機に瀕していた。1隻のアメリカ軍原子力潜水艦が、まだ放射能に汚染されていないオーストラリアのメルボルンに入港する。そこでは最期の日を待ちながら人々が静かに暮らしていた。艦長のタワーズは孤独な中年女性モイラと恋に落ちる。しかし、故郷に置いて来た妻子の事が忘れられず、今一歩を踏み出すことが出来なかった。一方、オーストラリア軍のホームズ大尉は産まれたばかりの赤ん坊と新妻と暮らしていた。刻一刻と死の灰が迫っている事を考えると、家族にどう接していいか分からなくなる。そんなある日、タワーズに汚染地域の調査任務が下される。もしかしたら、まだ他に生き残っている人間がいるかもしれない‥。淡い希望を胸に潜水艦は出航した。そこにはホームズ大尉、科学者ジュリアン等も同乗した。旅路の果てで彼等が見たものとは‥。
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(レビュー)
 冷戦時代に作られた核の恐怖を描いたSF映画。

 キューブリックの「博士の異常な愛情」(1964英米)や、それと良く似たストーリーで物議を醸したS・ルメットの「未知への飛行」(1964米)等、後に核兵器の恐怖を描いたSF作品が登場したが、それらはいずれも米ソ冷戦の国際情勢を俯瞰視点から捉えたサタイア、つまり毒の効いた風刺劇だった。本作はそれとは対照的に、あくまで個人レベルの視点から見たドラマである。死の灰が迫る中、絶望に打ちひしがれた人々の葛藤が主たるテーマとなっている。

 デストピア映画の一種であるが、決して暗さばかりが目立つ映画ではない。オーストラリアの美しい海辺がまるで楽園のように撮られていて印象的だ。暗い時代に敢えて美観を‥というのは、かえって残酷さを際立たせたりもする。
 しかし、俺はこの景観の美しさ以上に、そこで暮らす人々の生活が余りにも平和的でバカンス・テイストに溢れている所に引っ掛かった。どうにも切迫感がないというか、作品世界を絵空事のように見せてしてしまっているような気がしてならない。昨今のカタストロフィー系映画を見慣れている者としては、朴訥としすぎている‥という気がしてしまった。どこかでパニックの騒乱に陥るようなシーンが無いと、やはり作品としてのリアリティーは保てないような気がした。唯一、人々が宗教にすがる場面はあったが、そこも随分とのんびりとした光景で捉えられている。これも時代性ということだろうか?

 こういった周囲を取り巻く状況描写については色々と不審な点が多かったが、個人レベルで語られる人間ドラマについては面白く見れた。

 タワーズとモイラのメロドラマは切なかった。特に、モイラのタワーズへの告白と、それに続くジュリアンとの絡みは秀逸である。
 モイラはすでに中年に差し掛かった孤独な女性である。若い頃から随分と浮名を流してきたが、今まで本当の恋愛をしてこなかった。今や、彼女が頼れるものはアルコールだけになっている。そこに現れたのが誠実で逞しい軍人タワーズだ。彼への告白は、彼女にしてみれば最初にして最後の真の愛だったのかもしれない。しかし、タワーズには故郷に残してきた妻子がいる。すでに死んでいるかもしれないが、それでも彼は家族の生存を信じ再び一緒に暮らすことを夢見ている。残酷にもモイラは拒絶されてしまう。その後、彼女はその足でかつて自分が振った男ジュリアンの元を訪れる。昔聞いたプロポーズはまだ有効か?と訪ねるのだが‥。
 人間誰でも思うものであるが、一度過ぎ去った過去をやり直すことは出来ない。この一連のシークエンスは正にそのことを言い表していると思った。人生の悲哀がしみじみと感じられた。

 また、ホームズと妻の悲壮感漂う運命も良かった。目の前に迫る放射能は何人も避けがたい現実だ。たとえ、生まれたばかりの赤ん坊であってもこの残酷な運命は免れない。家族と残りの人生をどう生きればいいのか?その選択に迫るの描写は大いに見応えがあった。

 また、ジュリアンのレースにかける思いと行動力については、一つの生き方として”あり”だと思えた。彼は運命に抗うかのように夢を追い求める。おとなしく死を待っていても仕方がない。どうせ死ぬなら悔い無く死にたい‥という”攻め”の生き方は天晴れだった。
 他に、チョイ役で登場するビリヤード場の店主も良い味を出していた。彼の最期はペーソスに溢れている。

 尚、本作は時代設定を現代に変えてテレビ映画としてリメイクされている。「エンド・オブ・ザ・ワールド」(2000アメリカ豪)という作品で、完全版は3時間半に及ぶ大作だ。劇場用映画に比べると作りの規模が小さいのは否めないが、「渚にて」に比べると主人公達を取り巻く背景描写もしっかり描きこまれていて中々緊迫感のある作品に仕上がっている。また、後半に登場する救助信号のネタも、時代に合わせて上手くアレンジされていると思った。リメイク作の方はメルボルン出身のR・マルケイが監督を務めている。今ひとつパッとしない監督だが、何も駄作ばかりじゃないということが分かる1本なので、興味のある方はご覧いただきた。少なくとも、同じ終末モノでも同監督作の「バイオハザードⅢ」(2007米)に比べれば、世界観の作りなどはよく出来ている。
[ 2009/08/24 01:33 ] ジャンル人間ドラマ | TB(0) | CM(0)

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