豪華競演が見応えあり。
「黄色いロールス・ロイス」(1964英)
ジャンルロマンス・ジャンルコメディ
(あらすじ) 1930年代、イギリス国務大臣フリントン公爵は、結婚記念日のお祝いに妻に黄色いロールス・ロイスをプレゼントした。しかし、妻はロールス・ロイスより夫の部下との不倫に気もそぞろ。ついに二人の関係が夫にばれてしまい‥。数年後、ローマにやってに来たアメリカ人マフィア、パオロは愛人に黄色いロールス・ロイスをプレゼントする。早速それに乗って観光旅行を始めるが、途中で愛人はハンサムな写真屋に一目惚れしてしまう。更に数年後、ユーゴスラビアの小さな町。ミレット夫人が黄色いロールス・ロイスを購入する。そこにナチスの侵攻が始まり‥。
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(レビュー) 1台の黄色いロールス・ロイスを巡る3つのドラマをオムバス形式で綴った作品。
豪華俳優陣の顔合わせが見所である。
第1話は、少し悲しい結末を迎えるメロドラマ。J・モローの瑞々しい美しさが見ものでカラフルな映像も美しい。
第2話も切ないメロドラマだが、こちらは幾分ユーモアを含んだトーンで描かれる。S・マクレーンのコメディエンヌ振りが見所で、適度なオツムの緩さがチャームポイントだ。彼女しか出せない魅力だろう。そして、彼女と恋仲になる若き写真屋をA・ドロンが演じている。こちらの美形ぶりも中々の見もので、S・マクレーンと海辺の洞窟で交わすラブシーンは風情があって良かった。また、何度も登場する”超道徳”という言葉には笑わされた。
第3話は、一転して戦火に巻き込まれるヒロインをフィーチャーしたドラマになる。I・バーグマンが「誰がために鐘は鳴る」(1943米)を髣髴とさせる強い女性を演じている。O・シャリフとのロマンスも描かれるが、ここではそれはあくまでサブ的な扱いである。戦うヒロインの活躍ぶりにドラマは集中している。黄色いロールス・ロイスの意外な活躍(?)の仕方に面白みを感じた。
各エピソードを結びつけるのは、タイトルにもなっている黄色いロールス・ロイスである。いずれもロールス・ロイスは逢瀬の場所として使われる。中々面白いアイディアだと思った。ただ、このアイテムに託された”役割”はこの部分だけで、それ以外は”どうして黄色いロールス・ロイスでなければならないのか?”という必然性は余り感じられなかった。そのため全体を通して見ると今ひとつ物足りなく感じてしまう。
一つのアイテムを巡って綴られるオムニバス作品で、「レッド・バイオリン」(1998カナダ伊)という作品がある。こちらは1本のバイオリンを巡って約300年に渡る数奇なドラマが語られる国際色豊かなドラマだった。バイオリン製作者の愛憎の念、怨念と言っても良いが、それが各エピソードの登場人物達の運命を破滅へと追い込む。キーアイテムとしてのバイオリンが持つ”役割”がしっかりと確認でき見応えがあった。それとの比較から言うと、この黄色いロールス・ロイスにはキーアイテムとしての意味合いが薄い。そのためどうしても食い足りない感じを受けてしまった。