初めからバカ映画に徹している所が良い。
「アンダーカバー・ブラザー」(2002米)
ジャンルコメディ・ジャンルアクション
(あらすじ) 黒人スパイ組織ブラザー・フッドは、ザ・マンが率いる白人至上主義の秘密結社と日夜戦っていた。貧しい黒人のために泥棒稼業をしている影のヒーロー、アンダカバー・ブラザーの評判を聞きつけた組織は彼をスカウトする。彼はザ・マンの悪行に立ち向かうことになる。
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(レビュー) 黒人スパイが悪徳白人組織と戦うコメディ映画。
70年代初期に黒人の黒人による映画製作、いわゆるブラックスプロイテーション・ムービーの潮流が起こった。この流れは後にS・リー等によって90年代にニュー・ブラックムービーとして再興することになったのだが、本作は敢えて時代に逆行するかのように70年代当時のテイストが貫かれている。そこが何とも奇妙な味わいに繋がっている。
主人公アンダカバー・ブラザーはアフロにロンドンブーツ、サイケなファッションに身を包んだ超アナクロ野郎である。得意のカンフー技で白人達をバッタバッタと倒していく、言わばブラックスプロイテーション・ムービーの代表作「黒いジャガー」(1971米)の主人公シャフト、はたまた劇中にも登場する「燃えよドラゴン」(1973香港米)の黒人空手家、こうしたキャラクターのパロディのようにも見える。彼が時代錯誤も甚だしい数々のエキセントリックな行動で周囲を引っ掻き回していく。それがこの映画の基本的なギャグの構造だ。
ギャグは所々に寒いモノもあったが、トータルで見ると概ね笑わせてもらった。
特に、アンダーカバー・ブラザーがザ・マンの組織に潜入捜査する際、身分がバレないように白人文化に慣れようと珍特訓をする。これが馬鹿馬鹿しくて面白かった。
また、この映画には黒人と白人のヒロインが登場して対立する。このキャット・ファイトが無駄にエロい。エロとバカのツープラトン。これぞいかにもバカ映画の真骨頂である。多いに笑わせてもらった。
また、本作は音楽にもかなり力を入れている。どこにでも顔を出すJ・ブラウンはここでも大活躍(?)を見せ、相変わらずハイテンションな歌を披露している。
ただし、一つだけ気になったのはクライマックスに流れるM・ジャクソンの「Beat It」である。肌の色に関係なく幅広い人気を得た彼のスター性に、一部の黒人からは否定論も出た。ブッラクスプロイテーション・ムービーの回顧を目指す本作であれば、この選曲はいささか墓穴を掘ったかな?という印象が拭えない。ここはそれこそソウル・ミュージックかヒップホップあたりがベターではなかっただろうか?