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サマーウォーズ

手堅く作られており、娯楽作品として十分楽しめる内容。
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「サマーウォーズ」(2009日)星3
ジャンルアニメ・ジャンルSF・ジャンルアクション
(あらすじ)
 健二は数学だけが取り得の純情な高校生。物理部の先輩夏希から夏休みのアルバイトとして、一緒に生家に行って欲しいと頼まれる。彼女の家は古い旧家で大所帯の家族だった。健二はそこで年老いた祖母を安心させるために婚約者の振りをさせられる。”振り”とはいえ憧れの夏希の婚約者である。複雑な心持だったが、夏休みの良い思い出作りになると喜んだ。その夜、彼の携帯に謎の暗号メールが届く。それはネット上の仮想都市OZのシステムを混乱させるメールだった。健二はそれを知らずに得意の数学で暗号を解いてしまう。
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(レビュー)
 純情な理系少年の一夏の恋と冒険を描いたSFアニメーション作品。
 監督は細田守、脚本は奥寺佐渡子という「時をかける少女」(2006日)コンビ。前作同様に甘酸っぱい青春ロマンスをベースに敷きながら、仮想都市OZと現実世界の危機をサスペンス且つアクションたっぷりに描いている。

 映像のクオリティは高い。ネット上の仮想都市OZがこの映画のキーワードである。アニメにおける電脳空間表現と言えば、「攻殻機動隊」や「電脳コイル」等の傑作が思い出されるが、今回はポップ且つアナログなレタッチが見られ、その独特な世界観に惹かれた。OZの住人(アバター)のデザインも夫々に凝ったものが多い。大量に登場してくるが、それらを一つ一つ見るだけでも面白かろう。
 そして、映像クオリティの見事さは、陣内家の人々の造形についても言える。
 何と言っても驚かされるのは、これだけ多くの登場人物を、一人一人のキャラを立てて見事に描き分けている点で、細部にわたる所作が丁寧に描写されている。このドラマは基本的にはオーソドックスな少年の冒険談であるが、同時に大家族のドラマでもある。家族揃って食卓を囲む風景が幾度と無く登場してくるが、食事シーンは家族の絆を投影するのに最適のシチュエーションと言えよう。実に丁寧に描写されており微笑ましく見れた。

 OZの世界で起こる事件と健二達がいる現実世界の危機。二つの世界をリンクさせながらドラマは盛り上げられている。クライマックスの二転三転するプロットはサスペンスが効いていて楽しめた。ただし、一つ二つ興を削がれる臭いやりとりがあったのを除けば‥であるが。明快さ、ポピュラリズムに徹しようとした製作サイドの選択なのだろう。
 ただ、全体的に手堅く作られていて安心して見る事ができるが、見ている最中に幾つか引っ掛かる点があり、傑作!と手放しで評価できないのも事実で、前作に比べると今ひとつ気持ち良く感動に浸れなかった‥というのが正直なところである。
 原因は3つある。

1.現実世界におけるご都合主義
2.主人公健二の埋没
3.ヒロインの感情への擦り寄りの甘さ

まず1.について。クライマックスにいくについれて、現実の世界観の描写が御座なりなっていくような気がした。地球規模の危機が迫っている状況において、なぜ政府や諸外国、OZを作った側の危機管理の問題がスルーされているのか?ここに引っ掛かってしまった。テレビで事件の報道はされるものの、事件に対するリアクションは陣内家の人々に限定されている。ましてや、ニュースの裏番組で高校野球の地方大会を放送しているわけであるから、この辺りの現実感の無さは不思議である。映画を見ている最中この疑念がずっと付きまとい、製作サイドに上手く乗せられているだけなんじゃ‥という気がしてしまい、気持ち良くそこに乗っかることが出来なかった。電脳世界と現実世界をリンクさせたところがこの映画のミソであるなら、二つの世界の対比、現実世界のリアリティはもう少し気を配って欲しかった。もっとも、基本的にコメディなので、多少のご都合主義はスルーしても良いのだろうが‥。それよりも重要なのは次の二つだと思う。

2.についてはこうだ。多彩なキャラを描くのがこの映画の一つの目的になっている以上、時間的制約という物理的な限界から、どうしても広く浅くなってしまうのは仕方がない。それゆえ、主役健二が周囲のキャラクターに埋没してしまった感じがする。彼が”家族”というものに憧れるエピソードがプレマイズされていたら、彼の葛藤はグンと際立っていたかもしれない。そういう意味では、少し勿体無い作りになっているなと思った。また、OZにおけるキングカズマのインパクトのせいで損をしている面もある。

3.もやはり重要な部分だと思う。夏希は様々な出来事によって悲劇のヒロインになっていくが、その心情にもう少し迫る事が出来てたら、更にキャラクターが活きてきたのではないかと思う。例えば、健二とワビスケ、二人の間で揺れ動く葛藤は、彼女の幼少時代にまで遡ることもできたはずである。ヒロインとして大きく輝かせるためには必要な部分だったのではないかと思う。

このように色々と不満があった。
前作「時をかける少女」の評価が俺の中では高かったせいもあり、それとの比較で見てしまうと今回はやや落ちるという評価になってしまう。
 ただまぁ、先述の繰り返しになるが、こういった細かな部分を考えずに見る分には十分楽しめる娯楽作品になっていると思う。
[ 2009/09/05 00:41 ] ジャンルアニメ | TB(0) | CM(4)

今晩は!ありのさんへ、この作品のレヴューコメントを見て気付いた事があります。1現実世界と電脳仮想世界が舞台のアニメ・特撮作品がある事と(主なもの「電光超人グリッドマン」(1993/TBS・円谷プロ)、「電脳冒険記ウェブダイバー」(2001/テレビ東京・ウェブダイバー製作委員会)、「トロン」(2010年12月にデジタル3D映画作品「トロンレガシー」としてリメイク上映。)2.この作品に限らず、アニメや漫画に限らず舞台となった町に行く「聖地巡礼」がはやっているそうです。(主な場所サマーウォーズは長野県上田市、とある科学の超電磁砲(レールガン)は東京都立川市、らき☆すたは埼玉県久喜市旧鷲宮町地区と春日部市(補足クレヨンしんちゃんも春日部市が舞台です。)、エヴァ劇場版破は箱根町だそうです。それぞれアニメ・マンガの舞台という事で観光客の誘致に力を入れているそうですが、一部のマナーの悪い人達にも頭を悩ませているのも事実です。
[ 2010/06/08 22:31 ] [ 編集 ]

こんばんは、にょろ~んさん。
「トロン」がリメイクされるのですか?今にして思えば、オリジナル版はCG技術の先駆けとして画期的な作品に思えますね。
”聖地巡礼”は上手くやれば成功するケースもありますが、中には旬が過ぎて閑古鳥‥なんて所もあるみたいです。仰るとおり、最低限の節度は守って観光をして欲しいですね。
[ 2010/06/10 01:34 ] [ 編集 ]

今晩はありのさんへ、昨日は日本テレビの金曜ロードショーでこの作品が放送されていたのですが、主役の健二君を演じた人って、神木隆之介さんだったんですね。(「借りぐらしのアリエッティ(現在公開中)」で翔君を演じたのも彼です。他にも「ハウルの動く城」にも出演していました。)特に鼻血を出しながら「よろしくお願いしまーす!!」と言いながら、enterキーを押す場面はおかしかったです。それから、親族の一人がおばぁ様の手紙を読む場面も良かったですし、夏希さんがOZ空間で花札対決をする場面で負けそうになった時、世界中の人々の力を借りて戦う場面に熱く燃えてしまいました。(夏希さんの「アバター」も萌え萌えで可愛かったし。)でもこの作品を見てびっくりしたのは、「サーバーコンピューター」の電力を得るために「漁船」が登場したのにはびっくりしました。
[ 2010/08/07 21:57 ] [ 編集 ]

こんばんは、にょろ~んさん。
神木さんって声優を結構やってらっしゃるんですね。ナチュラルな演技が中々魅力的だと思いました。

この映画の面白さは、現実をいかに非現実的に描くか‥。そこでしょうね。そういう意味では、漁船の演出については同意します。そこに突っ込みを入れると、多分この映画はつまらなくなると思います。そういう意味では、私が挙げた問題点の1)は娯楽映画としては許容されるべき範囲かなと思います。

細田監督は間違いなくアニメーションの”表現”に、アニミズムナの可能性を求める稀有な作家だと思います。同様の事は「河童のクゥ~」の原恵一監督にも言える事で、私は今夏の新作にかなり期待しています。
[ 2010/08/09 01:58 ] [ 編集 ]

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