色々と穴はあるけれども、それを補って余りある快作!
「レッド・サン」(1971仏伊スペイン)
ジャンルアクション
(あらすじ) 盗賊リンクとゴーシュ一味は、日米大使が乗っていた列車を襲撃する。日米修好の証としてアメリカ大統領に献上する宝刀を奪って一味は逃走した。しかしその最中、リンクはゴーシュに裏切られて置き去りを食らってしまう。復讐心を燃え上がらせるリンク。大使に随行していた武士黒田は、そんな彼を道案内人にして宝刀を取り戻すためにゴーシュ追跡の旅に出る。
goo映画映画生活ランキング参加中です。よろしければポチッとお願いします!


(レビュー) ガンマンと武士の友情を描いた異色西部劇。三船敏郎、C・ブロンソン、A・ドロンの三大スターが競演し、男臭いドラマに仕上がっている。
何と言っても、黒田を演じた三船敏郎の存在感が抜群で、荒野を颯爽と歩む袴姿の武士‥という絵面が強烈なインパクトを残す。厳格で美徳を重んじるキャラクターも三船のカラーにピッタリで、日本の武士とはこうあるものだ‥というのが、彼の姿からひしひしと伝わってきた。しかも、まだこの頃はサムライという単語は世界規模のマーケットにそれほど浸透していなかったと思う。それを世界の人々に印象付けたのは本作ではないだろうか。海外の人達にとって、三船敏郎の姿はさぞ新鮮で刺激的なものに写ったに違いない。
三船にやや水あける格好になるが、リンク役のC・ブロンソン、ゴーシュ役のA・ドロンも夫々に好演していると思った。
物語は、黒田とリンクがゴーシュを追いかける‥というロード・ムービ形式で進行する。その間A・ドロンのドラマが完全に放置されてしまうのは、三大スター競演という煽り文句からすればやや物足りない感じを受ける。しかし、だからと言ってこのロード・ムービーが退屈すると言うわけではなく、三船&ブロンソンのやり取りはユーモアたっぷりで面白く見れた。西洋と和洋のカルチャーギャップの可笑しさ、キャラクターギャップの相違が上手く効いている。ここでのブロンソンは三枚目的なキャラクターである。眉間にしわを寄せ厳つい表情を崩さない三船とのコントラストが余計に際立ち、二人のチグハグな関係が上手く笑いに繋がっている。
また、中盤で女ッ気が加わるが、これもあくまでサービスの一環に留められており好感が持てた。若干、追跡劇のサスペンスを水っぽくしている気もするが、やはり西部劇に娼館というのは”お約束”で外せないだろう。箸休め的な意味からも。丁度良い按配といった感じである。それに、ここでも生真面目な三船のリアクションが中々楽しませてくれる。
クライマックスは哀愁漂う形で男の友情と裏切りが描かれている。大いに痺れさせてもらった。ドラマ上、コマンチ族を絡める必要性は特に無かった気もするが、ドンパチに迫力をもたらすという意味では奏功しているように思う。
ラストのオチも洒落ていて良い。
時代性を考えると本作は画期的な作品だと思う。現代ではこうした和洋のコントラストで見せる時代劇は中々作られないだろう。このことを鑑みれば、本作の価値は改めて出てくるような気がする。