手堅い作りで泣かされる。
「河童のクゥと夏休み」(2007日)
ジャンルアニメ・ジャンルファンタジー・ジャンル青春ドラマ
(あらすじ) 小学生の康一は、学校の帰り道に奇妙な石を見つける。水で洗うとその石から謎の生き物が出てきた。それは何百年もの間、地中に埋まっていた河童の子供だった。康一はそれにクゥと名付け家族と共に可愛がる。夏休みのある日、康一とクゥは遠野にある河童伝説を求めて旅に出る。
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(レビュー) 小学生と河童の一夏の友情を、笑いと感動で綴ったアニメーション作品。
監督脚本は「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲」(2001日)の原恵一。子供のみならず大人までも虜にしたこの作品で一躍注目を集めた気鋭のアニメーション作家である。「クレしん」同様、今回もツボを心得た作りに泣かされた。
原監督の持ち味は、何と言っても感傷に訴える演出が上手い所だと思う。
例えば、犬と前主人のエピソード。これを犬の回想で表現する辺りが実に上手い。はっきり言うとあざといのだが、そうだとしても涙腺が自然と緩んでしまう。
また、康一と同級生菊池の別れのシーン。ここでの菊池の不意をつく告白と、それに対する康一の素直になれない態度にも切なくさせられた。キャラクターの造形に関して言えばそれほど魅力的ではなく、むしろ昨今の潮流からすれば地味な方なのだが、一つ一つの細やかな演出が思春期相応のものとして実に適確に作られているので感情移入も素直に出来てしまう。
そして、何と言ってもクライマックスシーン。これもまた”あざとい”のだが、康一の寂寥感を淡々と綴ったシークエンスにはこみ上げてくるものがあった。
このように実に手堅く作られており、安心して見ることが出来る作品だと思う。
ただ、原監督の演出手腕は高く評価できるのだが、ドラマ自体は手堅すぎてかえって安易な印象を持ってしまうのも事実だ。
そもそも日常生活に異物が混入するこの手のドラマは映画・マンガの世界では多々存在する。人間と異物に育まれる友情ドラマも判で押したように定石の展開を見せる。例えば、スピルバーグ監督の「E.T.」(1982米)などは正にこれである。また、文明批判をしのばせた社会騒動は「キングコング」の後半と同じだ。更に言えば、康一の家族構成にいたっては「クレしん」の焼き直しと言えなくもない。何かしらサプライズな展開でも待ち受けていれば、新鮮な驚きで見ることも出来たのだが、そこが無かったのは少し物足りなかった。