実に楽観的なミュージカル。実力派が揃っている点は評価できるが‥。
「努力しないで出世する方法」(1967米)
ジャンル音楽・ジャンルコメディ
(あらすじ) ビルの窓拭きの仕事をしているフィンチは、「努力しなでい出世する方法」という本を読んで大企業に就職し、入社二日目にして大出世を成し遂げる。美人秘書ローズマリーと恋仲になり悠々自適なオフィスライフを満喫するフィンチ。それに嫉妬した社長の甥バドは、彼を陥れる計画を開始する。
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(レビュー) 世渡り上手な男が出世していく様を軽快な音楽とダンスで綴ったミュージカル・コメディ。
徹底してお気楽に出来ている所に引っ掛かる。いくら夢のあるミュージカルとはいえ、もう少し陰影のトーンを忍ばせてくれないとさすがに入り込めない。ミュージカル・シーンはともかくとして、ドラマをもう少し何とかして欲しかった。役員達も社員達も仕事をしている様子はほとんど出てこず、これで大企業を経営できているとは、どれだけ夢物語しているのだ?と言いたくなった。
そもそもミュージカル映画の始まりは1920年代にまで遡る。暗い不況から逃避するように当時の人々は夢のあるミュージカル映画を求めた。本作は正にその当時を想起させるような徹底的なオプティミズムなトーンによって支配されている。本作が制作された1967年という時代を考えると、ベトナム戦争の真っ只中、いわゆるアメリカ神話が崩壊した頃である。そこにもう一度夢物語を‥というプリミティブな舵取りは、欺瞞にしか写らないのではないだろうか。
また、60年代といえば、「ウエスト・サイド物語」(1961米)や「サウンド・オブ・ミュージック」(1965米)といった作品が登場して、ミュージカル映画が一つの頂点に達した時代でもある。これらは既存の華やか一辺倒だったものからの脱皮を目指して作られた作品である。その潮流を併せ考えてみても、この作品はどうにも時代錯誤に写ってしまう。
尚、本作は元々はブロードウェイのミュージカルで、メインキャストにオリジナル俳優を起用している。それが奏功しミュージカルシーンは上手く作られている。特に、フィンチ役の俳優の歌唱力は抜群に上手かった。映画はほぼ全編オフィスを舞台にしていて、これもミュージカル映画としては珍しい。パステルカラーに彩られた映像と共に歌とダンスについては楽しく見れた。