シチュエーション・コントのように面白く見れる。
「南極料理人」(2009日)
ジャンルコメディ・ジャンル人間ドラマ
(あらすじ) 南極ドームふじ基地。昭和基地よりも更に高山に位置する極寒の地に8名の隊員が勤務していた。海上保安庁の西村は料理担当。妻子と離れて1年以上もここで過ごすことになった。娯楽の少ない日常に少しでも楽しみを‥と思い、西村は限られた食材を駆使しながら同僚に料理を振舞う。ホームシックにかかる者、ストレスで参る者、恋人と離れて不安になる者。抱える悩みは夫々だが、彼等は揃って食卓を囲むことで心のオアシスを得ていく。
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(レビュー) 南極観測隊の悲喜こもごもを、気の良い調理担当西村の視線を通して描いたコメディ・ドラマ。原作は実話を元にしたエッセイということで、南極基地の生活がどう描かれているか?その一点で興味深く見れた。
また、コメディらしくキャラクターも個性的にデフォルメされていて面白い。温厚な隊長、気難しい先輩、マスコット的存在の後輩、酔いどれドクター等々。彼らが滞在する基地は過酷な環境にあるが、そんなこと忘れさせてくれるような自由人気質な人物たちが多い。さしずめ基地内はまるで男子部活のような空間が形成されている。
料理がモティーフになっているということで、そこも見どころの一つとなっている。出てくる料理は普段我々が口にしているものとほとんど変わらない。味気ない缶詰でも西村の工夫一つで立派な品に様変わりする。要はちょっとした心のもてなし、それが食生活の豊かさを心の豊かさを生む‥ということなのだろう。
映画の作りは原作のエッセイ・テイストを活かしながら日常スケッチの連鎖で構成されている。一つ一つのエピソードがコントのようになっており、小難しく考えながら見るタイプの作品ではない。群像劇的な作りで、ドラマのポイントはかなり曖昧であるが、その分気楽に見ることが出来よう。尚、個人的には、エビフライ、ステーキ、隊長のラーメンのエピソードがお気に入りである。
ただ、中には幾つか生理的に好みに合わない笑いもあった。これは演出の問題だと思う。例えば”おどけてみせる”ことで強引に笑いを取りに行ってる箇所は余り好きにはなれなかった。また、オフビートな笑いを狙いすぎてかえって”じれったさ”を覚える場面もあった。
例えば、中盤のシャワーのエピソード、バターのエピソード、観測のエピソード。3つの視点をモンタージュさせながら大騒動に発展していくシークエンスは”間”が長い。3つの時制が混乱し笑いの切れ味も薄まってしまった感じがする。ここはむしろ”間”を切り詰めて、早いカットバックで押しまくった方が面白かったのではないだろうか。
この映画はほとんどのシーンで”間”を長く取ることでオフビートなトーンが形成されている。2時間強の作品だが、この〝間”がしょっちゅう入ってくるので当然時間も長くなってしまう。コメディということを考えれば、もう少しコンパクトにまとめても良かったのではないだろうか。
一方で、この映画は隊員達の孤独感についても描かれている。離れて暮らす家族との関係、恋人との関係等が上手にラストのカタルシスへと繋がっている。ただ、全体的に映画の作りがコント仕立ての構成になっているので、いくら盛り上げられても涙の大団円‥とまでいかないのが苦しい所だ。逆に、このアッサリ感が良いという人もいよう。もはや好みの問題かもしれない。