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宿命

メタ構造を持った教示的映画。面白い試みの作品になっている。
「宿命」(1957仏)star4.gif
ジャンル人間ドラマ
(あらすじ)
 1921年、トルコ統治下のギリシャの小村。復活祭で村人達はキリストの受難劇を演じることになった。長老会と司祭によって配役が決まる。キリストを演じるのは羊飼いのマノリオス。マグダラのマリアを演じるのは魅惑的な後家カテリーナ。その他に4人の使徒が選ばれた。彼等は来る本番に備えて衣装のあつらえを始める。そこにトルコ人によって村を追い出されたギリシャ難民がやって来た。司祭は彼等をコレラ患者だと言って追放しようとする。そこにキリスト役のマノリオスが救いの手を差し伸べる。
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(レビュー)
 キリストの受難劇を演じる村人達が、難民を救うためにあたかも役柄のようになっていく様を、虚構と現実をオーバーラップさせながら描いたドラマ。キリストの教えである”慈悲の精神”を謳いあげ、さしずめこれは現代に蘇ったキリストのドラマか‥という解釈も出来る。

 メッセージが教示的なため取っ付き難い部分はあるが、巧みなキャラクター造形、シナリオの上手さで面白く見れた。
 例えば、マグダラのマリア役に抜擢されるカテリーナは実に興味深いキャラクターである。旧約聖書のマリアは「罪の女」としてキリストに悔悛した女性である。キリストの貼り付けを見届けるのだが、実際にこの映画でもそのような役割を持たされている。正に役柄がそのまま現実になってしまうところが面白い。しかも、本作では聖書に登場しないオリジナルな脚色も加えられている。彼女はユダ役の村民と姦通の罪を犯しており、それによってキリスト役マノリオスとの間に愛憎ドラマが派生していく。後のユダの裏切りに説得力をもたらすという意味でも、この姦通の脚色は中々巧みに思えた。
 他に、使徒役ミケリスの立ち回りも見応えがあった。長老である父の呪縛に捕らわれて生きる彼の葛藤は後半で一つの結果を見るのだが、彼の下した英断は大いに共感をおぼえるものだった。このあたりにはヒューマニズムな主張が感じられる。

 監督・脚本はJ・ダッシン。ダッシンと言えば盗賊一味の活躍を描いた活劇「トプカピ」(1964米)を思い出すが、本来彼は硬派な作家である。彼はハリウッドの赤狩りにあい、フランスでこの作品を撮った。その怒りは当然本作にも乗り移っている。マノリオス達の難民を守る抵抗運動は、赤狩りに対する抵抗を投影したものであろう。教示を目指したドラマではあるが、それ以上にダッシン自身の私怨も読み取れる。ある意味で、彼の作家としての”意地”が生み出した作品のように思えた。

 ただ、その強い思いは分かるのだが、ともすればそれは作品を私物化してしまう危険性も孕んでいる。
 引っ掛かったのはラストの処理の仕方である。難民達の蜂起は暴力主義の啓蒙にも見えかねない。これでは、自らの死をもって非暴力主義を説いたキリストの精神に反するのではないだろうか?キリストの死後、世界は光を失った‥と皮肉的に解釈すれば、それはそれで分かる気もするが‥。ラストの処理についてはダッシンの個人的な思いが先んじた‥という印象が拭えない。
[ 2009/10/12 01:30 ] ジャンル人間ドラマ | TB(0) | CM(0)

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