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浮草

小津作品の中では珍しいカラー。
浮草 [DVD]浮草 [DVD]
(2009/09/25)
中村鴈治郎京マチ子

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「浮草」(1959日)星3
ジャンル人間ドラマ
(あらすじ)
 ある港町に12年ぶりに嵐駒十郎一座がやって来た。彼がこの地にきたのには理由がある。地元小料理屋の女将との間にもうけた息子、清に会うためだった。しかし、どさ周りの身を恥じた駒十郎はずっと自分が父親であることを隠していた。清は何も知らずそんな父を叔父さんと言って慕った。ある日、一座の看板女優すみ子は、頻繁に出かける駒十郎のことを怪しんだ。そして、全ての事情を知った彼女は嫉妬心から駒十郎と大喧嘩をする。すみ子は復讐とばかりに若い女優加代を使って清を誘惑させようとするのだが‥。
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(レビュー)
 旅芸人をしている父と、素性を知らず叔父と慕う息子の絆を描いた感動ドラマ。

 監督・脚本は小津安二郎。本作は自信の「浮草物語」(1934日)をカラーでセルフ・リメイクした作品である。オリジナル版と人物関係はほぼ同じだが、舞台が信州の田舎町から三重県志摩半島の港町に変わっている。ここが前作と大きく異なる点で、カラーになったことによる映像上の一つの見所にもなっている。

 撮影は溝口健二の作品等で知られる名カメラマン宮川一夫。小津とのコンビは意外にも本作1本だけである。小津作品=モノクロというイメージがあるが、そこに色彩美をもたらした感性は見事であり小津との相性は上手くいっているように思う。

 まず、冒頭の港町の風景を捉えたシークエンスを挙げたい。風情のある町並みを一座が”ちんどん屋”よろしく練り歩くシーン。そこに無邪気に子供達がついて回るシーン。製作当時でさえ、郷愁の趣を感じつつ古来の日本の美しい風景に心和ませたのではないだろうか。屋内シーンが多い小津作品に、こうした美しいロケーションを上手くはめ込んだ宮川のセンスには脱帽である。
 また、花や傘、カキ氷といったアイテムに赤色をポイント的に配し、少し洒落た映像作りになっているのも面白い。従来の小津作品には無い”色”の演出には新鮮さが感じられた。しかも、敢えて刺激的な赤色を選択した所に唸らされる。

 物語はオリジナル版同様、涙を誘う人情話になっている。ただ、前作との比較で言うとカタルシスの面ではやや劣る。確かにラストシーンにはしみじみとさせられたが、一番のメインとなるのは父子愛ドラマの方である。その父子の葛藤が少し食い足りなかった。原因は愛人すみ子の存在がかなり突出しているせいある。今回は父子の肉親愛よりも駒十郎とすみ子の愛憎ドラマの方に物語が引っ張られてしまっている。おそらく、小津としては前作との差別化、ドラマ構造の複雑化を計る狙いがあったのだろう。しかし、そのせいでメインの父子ドラマが少し弱まってしまったような印象を受けた。むろん、その逆にすみ子との愛憎ドラマの方は充実したものとなっているのだが‥。このあたりは一長一短あるという気がした。

 最も印象に残ったシーンは、土砂降りの雨の中、駒十郎とすみ子が決別するシーンである。ここはかなりハードな罵り合いで驚かされた。抑揚を押し殺した喋り方をする小津作品の特徴からすれば異質であるが、二人の激情は非常に見応えがあった。すみ子を演じた京マチコの熱演が心に響く。
[ 2009/11/25 01:05 ] ジャンル人間ドラマ | TB(0) | CM(0)

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