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母なる証明

久しく味わっていなかったが、こういう感動の仕方もあるのか‥と目からウロコ。
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「母なる証明」(2009韓国)星5
ジャンルサスペンス・ジャンル人間ドラマ
(あらすじ)
 知的障害の青年ドジュンは、漢方薬店を開く母と二人で暮らしていた。度々悪友ジンテと吊るんで警察の厄介になるドジュンを、母はいつも心配していた。ある日、近所で女子高生の他殺体が発見される。現場にドジュンが持っていたゴルフボールが落ちていたことで、ドジュンは殺人容疑で起訴されてしまう。息子の無実を晴らそうと奔走する母。そして、彼女はジンテの家から血のついたゴルフクラブを発見する。
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(レビュー)
 息子の冤罪を信じる母の非情なまでの愛を綴ったヒューマン・サスペンス作品。

 監督・脚本はP・ジュノ。今現在、本国のみならず世界的にも注目されている若手監督のうちの一人である。喜劇とも悲劇ともつかない、その独特なテイストは見る者を引き付けて離さない。

 前作は異色のモンスターパニック映画「グエムル-漢江の怪物-」(2006韓国)だった。しかし、ジャンル映画にヒューマンドラマ、サスペンス、社会劇といった様々な要素を盛り込んだことによって、かえって作品のインパクトが拡散し狙いが完全に裏目に出てしまったような印象を受けた。欲張ればその分リスクを負うのも必然である。
 その点、本作はサスペンスとヒューマンのツーサイドで構築されたドラマで、内容が整理された分、食いつきやすい。また、この取り合わせも実にシックリと来る。

 サスペンスに関しては、どんでん返しも含めてよく考えられていると思った。ただ、多少強引と思われる箇所が幾つか見られるのが惜しまれる。このあたりの完成度が高ければ、サスペンスの傑作として名高い彼の出世作「殺人の追憶」(2003韓国)に匹敵する出来になっていたかもしれない。

 ただ、一方のヒューマンドラマに関しては、サスペンス面での失点を補って余りあるほどの出来栄えで、正直見終わった後は今までに体験したことの無い強い衝撃を受けた。母子の絆を描いた感動作‥と予想していると完全に裏切られる。

 ハンデを持ったドジュンは母の過剰な愛を冷めた態度で受け流しながら、早く成人の男になりたいと思っている。しかし、母にとっては目に入れも痛くないほど可愛いたった一人の息子。その意を介さずひたすら愛情を注ぎこむ。やがて、彼女のその愛は罪人のレッテルを貼られた息子の釈放という、盲目的な愛へと膨張していく。近親相姦的とも言っていいかもしれない。その常軌を逸した行動には、とにかくゾッとさせられた。
 こうしたクセのある語り口で母性を描いて見せたところが本作の最大のセールス・ポイントであり、既存の母子愛のドラマとは一線を画す強烈な個性となっている。母性=尊いもの、美しいもの、と語ってきた数々の名画が一瞬にして吹き飛んでしまう。それくらいの衝撃があった。これは良識の範囲では語れない映画だと思うし、また好き嫌いもはっきり分かれる映画だと思う。しかし、少なくとも母性の奥に潜む”闇”をここまで赤裸々に見せられれば、色々と考えさせられる物があるのではないだろうか。加えて、母子の過去のエピソードが中盤で登場してくるが、それを併せ考えてみるとこの結末は更なる戦慄と感動を呼び起こす。

 演出は基本的に緊迫感、切迫感を煽るようなものが多い。その一つに執拗なまでの俳優のクローズアップが挙げられる。修羅場と化したその現場をカメラは上手く拾い上げている。また、奥行きを活かした画面構図は、奥で何が起こっているのか?何が潜んでいるのか?というある種の”覗き見”的な恐怖観念を見る者に植え付ける。これも緊張感をもたらすのに大変効果的だった。こうしたテクニカルな演出については、ジュノ監督の計り知れない才気が伺える。

 また、物語の背景となるロケーションとサブキャラの造形。これらについては、映画の世界観を形成する上で重要なファクターとなっている。ここにも監督の構想がよく反映されていると思った。何気ないショットでも、魅力的なロケーションとサブキャラのおかげで随分と面白く見れる場面が多々ある。

 また、音楽は少しコミカルで温かみがあり、一見するとサスペンスには不向きな感じを受けるのだが、逆にこれがかえって独特の味わいを醸している。これも中々面白い試みに思えた。

 キャストでは、何と言っても母親役のキム・ヘジャの熱演が印象に残った。大切なものを失った寂寥感、狼狽振りは見ていて痛々しい限りだった。
[ 2009/12/05 01:01 ] ジャンルサスペンス | TB(0) | CM(1)

この映画って、某映画(米)とソックリみたいですね・・・。
まあ、似た映画はどこにでもありますし・・。
[ 2010/09/09 20:27 ] [ 編集 ]

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