歴史的価値のある戦争ドキュメンタリー。
「夜と霧」(1955仏)
ジャンルドキュメンタリー・ジャンル戦争
(あらすじ) 現在のアウシュビッツ収容所と戦争当時の映像を交錯させたドキュメンタリー作品。
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(レビュー) 30分ほどの短編なのでサクッと見れるが、見終わった後にはかなりヘビーな鑑賞感が残る傑作。
ホロコーストの映像、写真は何度か目にしてきたが、本作を見ると改めてこの戦争に対する深い悲しみと憤りを禁じえない。
山と詰まれた髪の毛は毛布になり、切断された生首は無造作に桶の中に放り込まれ、何百という皮と骨だけになった死体があたり一面を埋め尽くす。それらは火葬する事もできず、無造作にブルドーザーで埋められていく。これが戦争の狂気なのか?過去の悲劇を改めて認識させてくれるという意味で、本作は歴史的価値のある1本だと言える。
そして、この作品の優れている所は、ただ単に過去の凄惨な光景を並べるだけでなく、現在の収容所と対比して見せていることである。ひっそりと佇む収容所跡はひたすら静寂なトーンで包まれる。それが過去の惨劇をいっそう恐ろしいものに見せている。現在と過去のモンタージュが、時代を超えた普遍的なメッセージを見る者に突きつけてくる。
監督はヌーヴェル・ヴァーグの代表格A・レネ。彼の作品はとかく難解と評されることが多いが、本作はかなりストレートな作りになっている。映像に被さるナレーションも事実の説明に徹したもので明瞭である。基本的に客観視する立場が取られているが、ただ一言。ラストのメッセージにだけは監督の強い信念が感じられた。