ちょっぴりほろ苦い群像劇。
「輝ける女たち」(2006仏)
ジャンル人間ドラマ
(あらすじ) 古い伝統を持つキャバレー「青いオウム」のオーナーが入水自殺をした。彼の相棒でマジシャンのニッキーが跡を継ごうとするが、オーナーの遺言によって店の経営権はニッキーの二人の子供に託された。夫と離婚協議中の娘マリアンヌ。ゲイの息子ニノ。二人は葬儀に参列し遺言の存在に驚く。放蕩の限りを尽くしてきた父ニッキーに対する憎しみもあり、彼等は何の未練も無いこの店を売り払おうとした。しかし、そこには働いている従業員達がいる。彼らの事を考えると二人は店を売れなくなる。こうして「青いオウム」は存続するのだが‥。
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(レビュー) 老舗キャバレーに集うワケあり人間達の悲喜こもごもを描いた群像劇。
登場人物はかなり複雑に入り組んでいる。ニッキーはオーナーに息子同然のように育てられた孤児である。厳しい芸能界で一時代を築いたこともあり、芸にかける思いは人一倍強い。そういう意味では、仕事に対するガッツは認められる。しかしながら、私生活に関してはとことん不真面目で、二度の結婚と離婚を経験している。今は年甲斐もなく夜のステージに生きる美人歌手レアに鼻の下を伸ばしている有様だ。
その二度の結婚で生まれたのが、娘マリアンヌと息子ニノである。マリアンヌには別居中の夫が、ニノには同棲中のゲイの恋人がいる。それぞれに今の暮らしに不満を抱えており、それが彼等を新しい恋へと向かわせる。
映画はこの3人のドラマと、そこに二人の母親が絡んできて、キャバレー再建の奔走劇が描かれていく。
テーマは「家族」‥ということになろうか。バラバラだった彼等はオーナーの死によって一同に会する。初めは互いに憎しみ合っていたが、血の繋がりは消せない。夫々に過去の罪と向き合い、家族の温もり、大切さを思い知っていく。
ただ、この映画は家族愛を啓蒙するような美徳的な映画ではない。家族とはこうあるべきだ‥という理想を持ち出して万事解決とするわけでなく、家族のあり方について考えさせるような、そんな結末になっている。そこに俺は好感が持てた。
家族は個人が社会的な繋がりを持つ上での最小限の共同体である。誰もが家族の一員として生まれ、そして死んでいく。家族があるから個人があるのだ。しかし、同時に個人には夫々に固有の人生がある。個人の人生と家族との関係。これは表裏一体のようなところがある。家族のために自分の人生を犠牲にしたくないという人もいれば、逆に家族の幸せを優先に考える人もいる。このバランスのとり方は大変難しい。本作のラストは、この問題を提示しているような気がする。自分自信の人生と家族のあり方について考えさせるような、そんな懐の深いテーマが感じ取れる。
本作で少し残念に思ったのは、主人公ニッキーのキャラクターが弱かった点である。本作のような群像劇の場合、登場人物を一望できるような俯瞰視点のキャラクターが必要となってくる。その役割を担うのがニッキーであるが、彼のキャラそのものが貧弱であるため、どうしても映画全体が散漫なものに映ってしまった。むしろ、周囲のキャラクターの方が濃く、C・ドヌーヴ、E・ベアール・ミュウ=ミュウといった早々たるメンバーが揃い、ニッキーが完全に押されてしまっている。彼のキャラクターを前面に出すような構成が取れていれば、もう少し骨のある作品になっていたかもしれない。このあたりの作りは惜しまれる。