硬派なポリティカル・サスペンス。人間模様も面白い。
「野望の系列」(1961米)
ジャンル社会派・ジャンルサスペンス
(あらすじ) 空席となった国務長官に元議員のレフィングウェルが就任する案が議会に提出される。これを快く思わなかったのが、過去に激しい論戦を交えた因縁のライバル、ベテラン議員シーブだった。レフィングウェルが元共産主義者のメンバーだった過去を調べ上げ聴聞会にかける。窮地に立たされたレフィングウェルは、その嫌疑を晴らすべく反証を述べるのだが‥。
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(レビュー) 政界の内幕をハードに綴った社会派サスペンス作品。
前半はレフィングウェルの過去を追いかけるミステリ仕立てにのストーリーになっている。
彼は本当に共産主義党員と交流があったのか?それとも只の噂に過ぎないのか?その真偽が聴聞会の場で明らかにされていく。手だれの策略家や正義感に燃える新人、保身ばかりの臆病者といった個性豊かな政治家達が登場し、彼の立場を擁護する派、反対派に分かれて対立していく。前半は終始、緊張感が持続して面白く見れた。特に、レフィングウェルの過去を知る重要参考人が登場してからは、問題の核心に迫っていくようになるので俄然面白くなっていく。
ただ、後半から物語の目先は別のところに向いてしまう。それまでドラマの中心を担っていたレフィングウェル対シーブの対決が後方へと追いやられてしまい、変わりに双方の板ばさみにあって苦悩する聴聞委員会の委員長ブリッグの物語が語られるようになるのだ。前半と後半で映画が二分される形になっていて散漫な印象を持ってしまう。ここはどちらかに比重を置いた作りに徹してほしかった。
監督はO・プレミンジャー。毒の効いた政治風刺はいかにも”反骨の人”プレミンジャーらしい。保守にもリベラルにも加担しない中立の眼差しを貫き、魑魅魍魎がうごめく政治の舞台裏を冷徹に描いている。製作当時、アメリカでは赤狩りが盛んに行われていた頃である。本作のレフィングウェルも正にその矢面に立たされた人物であるが、ラストのメッセージにプレミンジャーなりのこの問題に対する静かな憤りみたいなものが感じられた。
更に、本作では同性愛の問題についても言及されており、そこにも同時代性が感じられる。これに関してはリベラルな立場がとられている。
キャストでは、老練な政界の重鎮シーブを演じたC・ロートンの演技が見応えがあった。一筋縄ではいかない狸オヤジといった風貌で、常に先を読む立ち振る舞いがキャラクターに説得力をもたらしている。その一方で、通りを歩く女の尻を視姦するエロオヤヂ振りに独特の愛嬌も感じてしまう。ビジュアル的な造形がそうさせるのだろう。以前、このブログで紹介した
「戦艦バウンティ号の叛乱」(1935米)の熱演も見事だったが、今回の存在感も抜群だった。尚、残念ながら本作が彼にとっての最後の作品となってしまった。