豪華キャストが勿体無い!
「パリは燃えているか」(1966仏米)
ジャンル戦争・ジャンルアクション
(あらすじ) 第ニ次世界大戦末期、ドイツ占領下のパリ。自由フランス軍は警視庁を含めた公共機関の奪還に成功する。これに対しドイツ軍のパリ占領軍司令官コルティッツは休戦協定を申し出る。自由フランス軍の内部では、このままの勢いでパリ全土を取り戻そうとする強硬派と、連合軍の到着を待って総攻撃の準備を整えようとする慎重派に意見が分かれた。その頃ヒトラーはパリ焦土作戦を発令していた。
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(レビュー) レジスタンスのパリ奪回作戦を描いた戦争巨編。フランス、アメリカの豪華スターが一同に集った大作だ。
スターを見るという目的なら、とりあえず見て損のない作品と言える。しかし、ことストーリーに関して言うと間延びした展開、散漫な語り口に退屈感を覚えてしまう。
第一に戦争アクション映画には付き物のヒロイックさが全く感じられない。おそらくフランス人なら歓喜して見れるのだろう。しかし、日本人である自分には”救われたパリ”を見せられても今ひとつピンと来ない。そもそも、この映画には主人公と呼べるような存在がいない。群像劇のような作りになっているためカタルシスを求めようがないのだ。
例えば、映画前半はA・ドロン演じる若き活動家の活躍が描かれるが、彼は中盤から姿を消してしまう。逆に、別の活動家の視点でストーリーが牽引されていく。これでは物語に没入できない。唯一、全編通して登場するのがドイツ軍の司令官コルティッツである。しかし、当然連合軍サイドの視点から描かれているわけで、彼は悪役サイドのキャラクターとなっている。まさか彼に感情移入も出来まい。
いずれにせよ、これだけ豪華なスターが出演しているのにも関わらず、ドラマへの興味が削がれてしまうのは実に勿体無い気がした。思うに、一番の要因は脚本のように思う。
共同脚本に当時まだ無名だった若きF・フォード・コッポラが参加している。オールスター参加の大作ということで気を使ったのだろうか‥。光り輝くスター達を前にして夫々の魅力を引き出せなかったのは彼がまだ若かったからなのか?あるいは、製作体制に何らかの障害でもあったのか?いずれにせよ散漫な脚本である。
そんなわけで集中力が途切れ途切れになりながら見たのだが、中には面白いと思うシーンがいくつかあった。それは市街戦の描写である。普通に考えたらありえないようなシュールな光景が時々登場してくる。例えば、砲弾が飛び交う中を市民が犬を連れてのんびりと散歩するなんて‥。事実に即した描写なのか、はたまた創作なのか。痛烈な皮肉、もしくはブラック・コメディのようで面白かった。
監督はL・クレマン。演出もシナリオの散漫さに足を引っ張られ精彩さに欠く。そもそも戦闘シーンにおける記録映像とロケーションの相関が完全に計られてないという時点で、どうにも雑に思えてしまう。他にも辻褄の合わない場面はあった。例えば、レジスタンスの英雄ベルナールが捕虜収容所に連れて行かるシーンで、カットが切り替わるとそれまで降ってなかった雨が突然降っていた‥なんてこともある。巨匠でもこういうことがあるのか‥と驚いてしまった。