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東京画

小津の「東京」はいずこへ‥。
東京画 デジタルニューマスター版 [DVD]東京画 デジタルニューマスター版 [DVD]
(2006/04/21)
ドキュメンタリー映画笠智衆

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「東京画」(1985西独米)星3
ジャンルドキュメンタリー
(あらすじ)
 小津安二郎監督を敬愛するドイツの映画監督W・ヴェンダースが、小津映画の関係者にインタビューしながら、現代の東京を切り取っていくドキュメンタリー作品。
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(レビュー)
 映画は名作「東京物語」(1953日)のオープニングシーンで幕開けする。その後、当時の風景とは似ても似つかぬ喧騒とアスファルトで覆われた都会のジャングルが映し出される。この対比からして、ヴェンダースが本作を以って何を言いたいのかが分かってくる。小津の写した「東京」への惜別なのだろう。その後、カメラは様変わりした「東京」をディープに捉えていく。

 そこで紹介されるのは、パチンコの文化と食堂に展示されるサンプル品を造る模造文化である。なぜこの二つ?と思ったが、これらはヴェンダースのような外国人にしてみれば相当ユニークなものに写ったのだろう。
 黙々と機械に向かって玉を打ち続けるパチンコという遊興は、時間と金銭の消費と引き換えにそれに見合う対価を得るゲームである。ヴェンダースはこのパチンコなるゲームを非人間的、非生産的なものとして皮肉交じりに評している。
 一方の食べ物のサンプル品については、本物そっくりに似せて作る技術に感嘆している。もはやアートと言ってもいいこの技術は日本古来の伝統工芸の系譜と言ってもいいかもしれない。しかし、ヴェンダースはこれに対しても虚飾の芸術にすぎないのではないか?と疑問を投げかける。決して明確に表明されているわけではないのだが、無機質に捉えたカメラが何となくそう言っているような感じがした。

 ヴェンダースは今回、笠智衆の案内で鎌倉にある小津の墓石を巡っている。そこには「無」の一文字が書かれているのだが、ヴェンダースの解釈によればこれは虚無の「無」ということになるそうだ。だとすると、彼が今回取り上げたパチンコと模造文化も「虚無」を暗に示すものなのだろうか。非人間的で機械的な遊興、パチンコ。真贋を見極める想像力を奪ってしまう大量消費の権化、模造文化。いずれも虚無的であるかもしれない。日本人としては何となく寂しい気もするが、まんざら的外れでもないような気がした。

 ただ、ヴェンダースは今の東京をペシミスティックに捉えてばかりいるわけではない。桜並木で無邪気に野球をして遊ぶ子供達、花見で楽しそうに宴会に興じる人々。これらの映像には安堵が感じられた。こうした人と人の結びつきがある限り、東京の町はまだまだ捨てたものじゃない-------そんな声が聞こえてきそうである。

 途中で、たまたま東京に来ていたドイツの映画監督V・ヘルツォークが登場してくる。彼は、この世界(東京)には撮るべきものが見つからない‥と嘆く。この嘆きは世界を破滅視するのがお特異な鬼才ヘルツオークらしい絶望的な意見だが、ヴェンダースは彼ほど東京の町を憂いているわけではないと思う。確かに小津映画のような風景は無くなってしまった。しかし、その名残は探せばまだいくらでも見つかる。それがこの花見のシーンに表れているような気がした。

 尚、インタビューの対象として小津作品の常連俳優、笠智衆と撮影監督、原田雄春の2名が登場してくる。小津流の演出と、あの独特のローアングの秘話が聞けたのがファンとしては嬉しかった。

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