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フローズン・リバー

見応えある女性バディ・ムービー。

「フローズン・リバー」(2008米)star4.gif
ジャンル人間ドラマ・ジャンル社会派
(あらすじ)
 カナダ国境付近の寒村。ギャンブル狂の夫に逃げられたシングルマザー、レイは高校生と小学生の息子を抱えながら貧しい暮らしを送っていた。新しいトレーラーハウスを買う頭金を夫に持っていかれ途方にくれていたある日、偶然夫の車を発見する。追いかけてみると、乗っていたのは先住民モホーク族のライラという女性だった。彼女はその車を拾ったと言う。彼女も夫を失い赤ん坊を義母に取り上げられた不幸な身の上だった。ライラは裏ではカナダからの不法移民を密入国させる仕事をしていた。レイは多額の報酬に目がくらみその仕事に協力するようになる。
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(レビュー)
 二人のシングルマザーが辿る非情な運命をシリアスに綴った社会派人間ドラマ。

 貧しい暮らしから這い上がりたいがために仕方なく悪行に手を染める彼女等の悲痛な思いがひしひしと伝わってくる作品だ。見終わった後には、何とも言えぬ複雑な感動に襲われた。

 まず、物語の舞台が新鮮である。カナダとアメリカの国境沿い。ここには先住民モホーク族の居留地がある。警察も手が出せない治外法権の土地で、不法入国者はそこに流れる凍った川、フローズン・リバーを密航ルートに使って行き来する。法の隙間をついた犯罪行為で、レイとライラは密入国者を自動車のトランク乗せてここを往復する。しかし、氷はいつ割れるか分からないし、運悪く国境に差し掛かったところで見つかれば即お縄だ。このスリリングさが映画のサスペンスを上手く演出している。
 越境ドラマは、「ブラックボード-背負う人-」(2000イラン)や「少年と砂漠のカフェ」(2001イラン日本)等、難民が多い中東を舞台にしたもので多く見られるが、アメリカを舞台にしたものは珍しいのではないだろうか。多民族国家ならではのリアリティを感じるし、9.11以降不法入国の取締りが強化される昨今、注目されてしかるべき問題だと思う。社会派的なテーマを含めた所に本作の重みも増す。

 ドラマの軸を成すのは、レイとライラの友情物語である。密入国幇助の共犯関係になる二人は、互いに似た境遇にある事を知る。夫を失い貧困に喘ぐ今の暮らしをどうにか立て直したい‥その共通の願いが二人の絆を強めていく。そして、その繋がりをより確固とするものは子供の存在だ。彼女等にとって唯一の希望は子供達である。彼等のためにだったら、どんなに汚い仕事にも手を染める。その母心がこの犯罪行為に拍車をかけていく。ちなみに、ガソリンスタンドでレイがライラの秘密を知るシーンは重要な場面だと思う。ここで二人の信頼関係が決定的なものになったような気がした。さりげなく描かれているが中々いいシーンである。

 そして、この映画の妙味は何と言っても、この友情を必要以上にベタなものとして描かなかった点にあろう。二人の間で交わされるコミュニケーションは実に少なく極めてクールなものに留められている。顔を合わせても仏頂面で淡々と仕事をこなすだけ。しかも、人種の違いからくる偏見が、近すぎず遠すぎずの微妙な距離を築いている。密入国のスリリングさに加えて、二人の友情も中々スリリングに描けていて面白く見れた。

 キャストでは、レイ役を演じたメリッサ・レオの好演が光る。冒頭の彼女の気だるい佇まいからして、一気に映画の世界に引き込まれた。以後も、終始重苦しい雰囲気をまとい続ける。身体中に入れられたタトゥーも、彼女の歩んできた人生を色々と想起させ魅力的だ。

 監督・脚本はこれがデビュー作となる女流C・ハント。低予算のインディペンデント映画であるが、その確かな演出力と、魅力的な人物造形があのタランティーノに評価され本作で見事にサンダンスを制した。新人離れした本格派である。
[ 2010/02/06 01:02 ] ジャンル人間ドラマ | TB(0) | CM(2)

今晩は、ありのさんへ。今日僕はある映画館で「おとうと(山田洋二監督/2010/出演吉永小百合、笑福亭鶴瓶、加瀬亮、蒼井優)」が始まる前の予告編でこの作品の事を知りました。さらにこの作品は、あるインターネットサイトで先着1000名様限定「有料VOD(ビデオ・オン・デマンド)配信(料金は1200。)」される事も決まりました。この作品の様に国内・海外の映画祭で高い評価を得ながらも、日本では劇場公開(メジャークラスの映画館(東映系、東宝系、松竹系、東急系など。)する機会が得られない作品は、「ネット配信(有料or無料)」や「単館ミニシアターでの公開」という道を選ぶしか方法はないのでしょうか?
[ 2010/02/08 20:32 ] [ 編集 ]

こんばんは、にょろ~んさん。

インターネット配信とは中々斬新なアイディアですね。

スターが出ていない、お金がかかっていない地味な作品はどうしても埋もれてしまいますね。下手をすると未公開のままビデオスルーということもあります。この作品は以前から注目していた1本だったのでようやく劇場公開されて良かったと思います。

去年の日本の映画界は興行的には上々のようでしたが、シネコンを中心にお客さんが入る映画で占められてしまうのはいかんともしがたい事実のようです。
[ 2010/02/10 01:17 ] [ 編集 ]

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