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リトル・チルドレン

痛い!
リトル・チルドレン [DVD]リトル・チルドレン [DVD]
(2007/12/21)
ケイト・ウィンスレット.パトリック・ウィルソン.ジェニファー・コネリー.ジャッキー・アール・ヘイリー

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「リトル・チルドレン」(2006米)star4.gif
ジャンルロマンス・ジャンルサスペンス・ジャンル社会派
(あらすじ)
 アメリカの閑静な住宅街に小児性犯罪で服役していたロニーが戻ってきた。町中が不安に覆われる中、幼い娘を持つ母サラの心境も穏やかではなかった。一方、司法試験に落ち続ける主夫ブラッドは、キャリアウーマンの妻の尻に敷かれる日々を送っていた。子連れのサラとブラッドは近所の公園で知り合う。単調な日々の暮らしに不満を持っていた彼等はすぐに親密になっていった。ある日、いつものように子連れでプールデートに出かけた時に事件が起きる。その場にロニーが現れたのだ‥。
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(レビュー)
 不倫に落ちるカップルと、性犯罪の前科を持つ中年男の苦悩をシリアスに綴った作品。メロドラマと社会派ドラマの両面を併せ持った作品で見応えがある。

 不倫を題材にしたメロドラマ自体はよくある話だが、サラとブラッド夫々の葛藤は丁寧に描写されており中々真に迫るものがあった。
 サラは夫の性癖に嫌気がさして、妻である事を捨て”女”としての自立を強めていくようになる。ブラッドは司法試験の重圧から逃れるようにして、ストレスの解放を外に求めていくようになる。二人が現実から逃避するようにして不倫に落ちていく背景はよく理解できた。この前の記事で紹介した「ピクニック」(1955米)と比べると内容の濃さがまるで違う。説得力のあるものに思えた。
 そして、この不倫劇は終盤で思わぬどんでん返しが待ち受けている。二人の性格の違い、生き方の相違が見れて面白い。

 まず、ブラッドの側から見てみると、この不倫は結局のところ趣味のフットボールと同質のもの。つまり、自分が”男”であることの確認行為に過ぎなかったのだろう。しかし、自分は自尊心を持った一人前の男なんだ‥ということを確認した所まではいいが、彼はそこからあと一歩を踏み出すことが無かった。この不倫にそこまで命をかけられなかったということである。これはこれで正しい判断だったと思う。しかし、サラや残された家族はどうなるか?という事を考えると、実に稚拙な決断と言うことも出来る。
 一方のサラはこの不倫に最後まで積極的にのめりこんでいった。考えてみれば、デートの最中いつもモーションをかけていたのは彼女の方だった。彼女は周囲から一目置かれる良き妻にして文学才女である。そして、その一方で内面に悪女性を隠し持っている。「ボヴァリー夫人」を例に出して破滅型恋愛を夢想するシーンは、彼女の本音を曝け出した重要な場面だと思うが、彼女は物事を頭で考えているつもりで、本当のところは感情で行動しているのだと思う。したがって、彼女の最後の決断も、その性格からいって至極納得のいくものに思えた。ただし、ブラッド同様、不倫の罪業について考えてみると、彼女は何の責任も取っていないわけで、その行動はやはり稚拙と言わざるを得ないだろう。

 そして、不倫は必ず誰かを犠牲にするものである。一番の犠牲者はデートの口実として連れ出される彼等の子供達だ。子供をだしに不倫を重ねるとは、果たしてサラとブラッドは大人と言えるだろうか?「リトル・チルドレン」というタイトルは、彼等を指す皮肉とも取れる。

 そして、この映画にはもう一人、犠牲に晒される子供が登場してくる。それがロニーだ。
 こちらは犯罪者が辿る悲惨な人生を描いた社会派的な作りになっている。小児性愛者として長年服役していた彼は、出所後、年老いた母と暮し始める。彼の生い立ちは明確にされていないが、何らかの過去のトラウマによって普通の恋愛が出来なくなってしまったのだろう。このあたりはヒッチコックの「サイコ」(1960米)、あるいはそのモデルとなったシリアルキラー、エド・ゲインの生い立ちを重ね合わせてみると非常に理解しやすい。やがて、危険な性犯罪者というレッテルを貼られたロニーは、町の自警団から執拗な嫌がらせを受け、引き篭もりの生活を余儀なくされていく。社会復帰のチャンスすら与えられず追い詰められていくのだ。その末路は実に悲惨だった。彼もまた社会の偏見という犠牲に晒された「リトル・チルドレン」だったのではないだろうか。

 後でクレジットを見て知ったが、ロニーを演じたのは若い頃に子役として人気を博したジャッキー・ヘイリーだった。「がんばれ!ベアーズ」(1976米)でT・オニールのボーイフレンド役を演じていた、あの少年である。それがまさかこんな風貌の変態中年になっていたとは‥。二つの顔が全然結びつかないのだが、本作の怪演で久しぶりに第一線へのカムバックを果たした。これだけインパクトのある役を演じてしまうとその後のキャリアが心配されるが、ここは一つ再起をかけて頑張って欲しいものである。
[ 2010/02/12 00:28 ] ジャンルロマンス | TB(0) | CM(0)

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