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夜の終りに

ただの恋愛映画ではない。背景に辛辣なメッセージが隠されている。
夜の終りに [VHS]夜の終りに [VHS]
(1992/02/21)
タデウシュ・ウォムニツキークリスティナ・スティプウコフスカ

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「夜の終りに」(1961ポーランド)星3
ジャンルロマンス
(あらすじ)
 医師アンジェイは空虚な日々を送っていた。看護士との恋愛に虚脱感を覚え、ボクサーの専従医としての仕事にも身が入らなかった。そんな彼は夜になると別の顔を見せる。ジャズバンドのドラマーとして活躍するのだった。ある晩、彼の演奏に耳を傾けていたペラギアという美女に出会い恋に落ちる。終電が無くなった二人は、彼のアパートで一夜を過ごすことになるのだが‥。
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(レビュー)
 孤独を抱えた男女の一夜を、スタイリッシュな映像とスリリングな会話で綴った小品。
 監督はポーランドの巨匠A・ワイダ。抵抗三部作で一躍世界の注目を浴びた彼が、その直後に取り上げたミニマムな恋愛ドラマである。

 物語は典型的なボーイ・ミーツ・ガール物である。仕事も趣味もガールフレンドにも不自由しないアンジェイは、心が満たされなかった。そこに魅力的な女性ペラギアが現れ恋に落ちる。彼女を部屋に連れ込むことに成功するが、いくらモーションをかけてもはぐらかされるばかりで次第に彼は苛立っていく‥というのが、基本的なドラマの流れである。筋書きそのものは決して面白いわけではなく単調だが、機知に富んだ会話、恋の駆け引きをまるでゲームのように見せるシナリオ・センス。このあたりが面白く見れる。場面転換の少ないたった一夜の出来事でありながら、ヴァイブレーションに富んだ脚本は見事だと思った。
 例えば、終バスに飛び乗ったペラギアは、アンジェイが追ってくるのを見透かしたように切符を2枚買う。彼女がしたたかな女性である事が一発で分かるシーンだ。さらりと描いてみせるあたりが心憎い。

 そして、今作で最も注目すべきは、共産国家ポーランドの社会情勢を物語の中に巧みにしのばせた点である。
 ペラギアは誘惑してくるアンジェイに一定の”協定”を結ばせる。それによって彼の性的衝動に釘を刺し、恋愛関係におけるイニシアティブを取っていく。この関係がまるで社会主義国家ポーランドの暗喩のように思えてくる。つまり、ペラギアが協定を締結させる資本家だとすると、アンジェイは国家に搾取される労働者のように見えてくるのだ。どこにでもありそうなロマンス映画に政治風刺を投影したあたりは、さすがに社会派ワイダと唸らされる。
 ワイダの作家としての辛辣さはエンディングにも見られる。この結末の意図するところは様々に解釈できようが、噛み締めれば噛み締めるほどそこに味わいが生まれる。余韻を引くエンディングで上手い。

 尚、演出はかなり奔放で若々しい感性が見られる。会話劇がメインの戯曲的な内容なので、敢えて即興的な演出に傾倒したのではないかと想像できる。ドライヴ感溢れるカメラはJ・L・ゴダールの映画のようでもあり、欲望を含ませた男女間のセリフのキャッチボールはまるでE・ロメールの映画のようでもある。これほどまでにヌーヴェルバーグのテイストが強く入ったワイダ作品も珍しい。他の作品に比べると少し異質な感じもするが、同時にA・ワイダという作家の懐の深さも感じられる作品となっている。
[ 2010/03/07 14:52 ] ジャンルロマンス | TB(0) | CM(0)

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