ドロン&ベルモンド競演の快作。
「ボルサリーノ」(1970仏伊)
ジャンルアクション
(あらすじ) 1930年代のマルセイユ。強盗の常習犯ロッコが刑期を終えて出所した。昔の恋人を訪ねてみると、そこには新しい情夫フランソワがいた。二人は派手な喧嘩を始めるが、これがきっかけで奇妙な友情が芽生える。その後、ロッコはフランソワの詐欺稼業に協力するようになっていく。やがて二人の悪名は暗黒街に響き渡るようになり、マレロのマフィア組織に迎え入れられた。そこでも二人は目覚しい活躍を見せていった。そんなある日、フランソワはバカンス先で、昔ナンパしたことのある少女ジネットに再会する。しかし、彼女は敵対するマフィア組織ポリの情婦だった。
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(レビュー) ヤクザ達の刹那的な生き様を痛快に綴ったギャング映画。
ドラマ自体は取り立てて新鮮味が無く単調。細部に渡る詰めの甘さも作品としての完成度を落としている。しかし、この映画の魅力は何と言っても、フランスの二大スター、J・ポール・ベルモンドとA・ドロンの魅力を存分に引き出したところにあり、2人の競演作自体が意外に少ないこともあり、その希少性が作品としての価値を引き上げているような気がする。とにかく、本作におけるベルモンド&ドロンの格好良さは尋常じゃない。ここまで徹せられると、スター映画然とした潔さも感じられる。そういった意味では、ドラマを不用意に詰め込まなかったのはかえって良かったのかも‥そんな気にもなってくる。加えて、本作を代表するといえば音楽。どこか陽気な感じのするテーマソングが不思議な味わいをもたらし耳に深い余韻を残す。
まず、序盤のロッコとフランソワの殴り合いから映画の世界に一気に引き込まれた。二人ともセリフを一言も喋らず、ひたすら無言で殴りあいを始める。拳で語ることでお互いの強さを認め合うという、正に体育会系的なノリ。男同士の友情に言葉など不要、といったところか。このニヒリズムが堪らない。
後半から、ポリとマレロの二大勢力の抗争で物語はスケールアップしていく。しかし、話が大きくなるにつれて、ロッコとフランソワの友情ドラマが後方に追いやられてしまい急にテンションが落ちてしまうのは残念だった。せめてボスであるポリとマレロにカリスマ性があればまだ盛り上がるのだが、それも無いためこの抗争劇自体がどこか安穏としたものに写ってしまった。そもそもこの映画全体に言えることなのだが、冷酷非情なマフィア社会を描いておきながら、作りが割とライト志向に拠っている。そこが物語のリアリティを失している。
ただ、ラストにはスカッとさせられた。「冒険者たち」(1967仏)におけるA・ドロンとL・ヴァンチェラの友情にも似た、男泣き必至なエンディングになっている。コインを使った演出も気が利いてて良かった。
ちなみに、公開時には二大スター競演ということで大いに評判を呼び、その後続編が製作された。未見なので評価のしようがないが、どうやら続編は今作を懐古するような物語になっているらしい。ロッコとフランソワの友情は本作でいったんの終わりを見せるわけで、蛇足という気がしなくもない。
この映画のメロディーが耳について離れないのは何故だろう? 酒場で、私は小さなホンキートンク・ピアノでもって、それを弾く。周りのギャラリーは大喜び! そしてもう一つ。ベルモンド(実は彼を嫌いなんだけど)の「ラ・スクムーン」こちらは電気オルガン。どちらも昔のフランス・フィルム・ノワールの粋が感じられる。それにひきかえ、現代の作品ときたら......。嘆かわし...。
映画音楽を聴くと映像も自然と蘇るもの。
それとは別に私は今作のテーマソングに一つの思い出があって、それが反芻されます。
名曲は人生と共にあり‥ですね。
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