独創的な世界!
「真夏の夜の夢」(1959チェコ)
ジャンルファンタジー・ジャンルアニメーション
(あらすじ) 大公の婚礼を翌日に控えた王国。国中が浮かれる中、貴族の娘ハーミアは勇敢な騎士ディミートリアスとの婚約を反故にして笛の名手ライサンダーと駆け落ちする。嫉妬に駆られたディミートリアスは二人を追って森の中に入っていった。その後をディミートリアスに片想いするヘレナがついていく。森の支配者オーベロンはその様子を面白がり、妖精パックを使って悪戯をする。そして、森の王女ティターニアを振り向かせようと画策するのだが‥。
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(レビュー) シェイクスピアの戯曲を幻想的に描いた人形アニメーション作品。
4人の男女と森の住人達が織り成す恋愛騒動は、大公の婚礼を祝うために集められた芝居一座の面々が加わることで狂騒的なものになっていく。複雑に絡まりあう恋愛模様は、クライマックスとなる芝居一座の劇中劇へと結実し見事な大団円を迎える。先の読めない展開で中々面白く見れた。
そして、ドラマもさることながら本作の最大の見所は何と言っても生き生きと表現されたアニメーション、そして幻想的なビジュアルである。
特に、クライマックスの演劇シーンは白眉の出来栄え。人形の一つ一つの所作はなめらかな動きで、尚且つ手作りの温もりも感じられる。コマ撮り撮影の苦労が偲ばれる。
また、幻想的に彩られた森の風景も素晴らしい。花や草木、動物、妖精、半獣人の異形の怪物達が共存し、ダークな色調をしのばせつつ魅力的なイマジネーションの世界が構築されている。特徴的と言えば、サイケデリックな照明効果が挙げられる。エッジの効いたシュールさはこの作品世界の大きな魅力だ。まるで悪夢を見ているような感覚に捕らわれた。
チェコでは昔から人形アニメは盛んに作られており、本作の監督イジー・トルンカは世界的にも知られる巨匠である。その系譜に連なるのが
「アリス」(1988スイス)等で知られるJ・シュヴァンクマイエルといった現代の作家達である。脈々と受け継がれるチェコ映画の伝統と言っていいだろう。