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渇き

正に鬼才!ただ、所々で感性にフィットしない部分がある。

「渇き」(2009韓国)星3
ジャンルロマンス・ジャンルホラー
(あらすじ)
 カトリック神父サンヒョンは病に倒れる人々を救う事が出来ず、信仰の限界に打ちのめされる。アフリカへ渡った彼は、難病ワクチンを開発する被験者となり絶命する。ところが、そこで奇跡が起こる。一度死んだはずの彼は蘇ったのだ。帰国後、幼馴染ガンウの癌を治したことで、サンヒョンは軌跡の人として崇められていく。しかし、その時彼の身体には異変が起きていた。人間の血を吸わないと生きていけない吸血鬼になっていたのである。そんなサンヒョンにガンウの妻テジュは惹かれていく。夫と義母に小間使いのようにあしらわれる日々から解放されたい‥。その渇望が不倫へと走らせていった。やがて、二人の禁断の愛は恐るべき事件を引き起こしてしまう。
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(レビュー)
 吸血鬼になった神父と不幸な身の上にある人妻の不倫を、ユーモラスなトーンを交えて綴ったホラー・ロマン。

 監督・脚本は韓国の鬼才パク・チャヌク。原案はE・ゾラの「テレーズ・ラカン」。1928年と1952年に映画化されているが、52年版のM・カルネが撮った「嘆きのテレーズ」の方は見たことがある。通俗的な不倫劇ではあるものの、人物の葛藤が冷徹なタッチで描出され見応えのある作品だった。特に、義母の目のクローズアップの恐ろしさは今だに忘れがたい。

 本作は、原作の不倫相手の男を主人公に仕立て、そこにバンパイアというファンタジー要素を加えている。見た時には少々戸惑いを覚えたが、作品全体を通してみるとこれは中々意表を突く面白い設定だと思った。監督は物語の寓意性を狙ったのだろう。

 このドラマは、サンヒョンとテジュの再生のドラマになっている。ウィルス感染で死んだサンヒョン。ほとんど生きた心地がしない鬱屈した日常を送るテジュ。死んだ、もしくは死んでいる彼等は、出会うことで生まれ変わる。つまり、再生の一つ象徴としてバンパイアという設定があるのだ。ちなみに、自殺はキリスト教では罪とされている。サンヒョンの死は明らかに自殺行為であり、彼が蘇ったのは神の軌跡でも何でもなく悪魔の仕業と解釈するのが妥当だろう。彼は悪魔に魂を売ってバンパイアになった。メフィストフェレスに代表されるように悪魔は人間の心に欲望を植え込む。それによって人間は悪魔に成り果てていく。

 テーマは、この欲望がいかに強大で計り知れないものか、いかに恐ろしいものか‥ということになる。
 バンパイアにとっての吸血行為は人間にとっての”性的行為”とイコール、つまり”生存本能”という意味合いで重なるものである。不倫という”性的欲望”を通して人間の本質的な”生存本能”を描いた見せた原作のテーマを、チャヌク監督は怪物達の吸血行為というファンタジーを借りて炙り出している。考えてみれば、これは実に大胆なアレンジと言えるのではないだろうか。この原作でこのドラマを描こうとした監督の才気に驚嘆してしまう。

 ただし、”生存本能”つまり吸血行為の葛藤というテーマ自体は、バンパイア映画ではお馴染みのテーマであり、古くは「吸血鬼ノスフェラトゥ」(1922独)、最近では「トワイライト」シリーズでも見られるものだ。恋愛ドラマ的な要素も入ってくるので物語にしやすいというのもあろう。この「渇き」も根底にあるのは恋愛ドラマである。原作改変の着眼点からすると、結末に関してはメロドラマとして、いささか綺麗にまとめ過ぎたかな‥という印象を持ってしまった。何せ監督は、かの復讐三部作を撮った鬼才である。期待を大きく裏切るようなものを見せて欲しかったのだが、至極常套で何だか物足りなく感じてしまった。

 演出に関しては少々評価に窮する部分がある。というのも、所々で感性に合わないものが見られたからだ。
 本作は基本的にシリアスな恋愛劇である。ただし、監督が監督だけに、当然一筋縄では行かない作品となっている。サスペンスで引っ張る場面に度々ユーモラスな演出を織り込み、奇妙な味わいをもたらす作為が計られている。これまでにもチャヌク作品にユーモラスな味わいは不可欠だった。しかし、本作に関して言えば、今までとはちょっと傾向が変わってきているように感じた。
 ユーモアと一口で言っても様々なものがあり、その種類は自分の中では基本的に4つに分類される。微笑、苦笑、暖笑、冷笑という4つだ。微笑はクスクスと笑えるもの、苦笑はブラックな笑い、暖笑はほのぼのとした笑いもしくは涙、冷笑は煮え切らない笑いだ。これまでのチャヌク作品はどちらかと言うと苦笑、つまりブラックでシュールな笑いが多かったように思う。しかし、今回は少し違う。悲恋劇という”重さ”との兼ね合いから言っても、一々笑いが”軽く”写ってしまう。例えば、サンヒョンが植物状態の患者の血を吸うシーン、死体が見える幻想シーン等は陳腐で冷笑せずにいられない。無理に笑いを入れる必要も無かったと思うのだが‥。他にも演出に関しては色々と不満に思う箇所があった。

 サンヒョン役はソン・ガンホ、テジュ役はキム・オクビンという初見の女優だった。しかし、このテジュの女優がかなり頑張っている。処女性を表した少女のような顔つきから、魔性を忍ばせた”女”の顔まで幅広い表情を見せ非常に魅力的だった。正直、後半はソン・ガンホを完全に食う勢いだった。逆に、ソン・ガンホは今ひとつキャラクターを活かしきれず勿体無い。悪魔に魂を売った彼の葛藤にねちっこく迫るようなシーンが、後半部分にもう少しあっても良かったように思う。
[ 2010/04/02 19:23 ] ジャンルロマンス | TB(0) | CM(0)

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