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煉獄エロイカ

目くるめく摩訶不思議な吉田喜重ワールド。
煉獄エロイカ [DVD]煉獄エロイカ [DVD]
(2005/10/21)
岡田茉莉子鴨田貝造

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「煉獄エロイカ」(1970日)星3
ジャンル社会派・ジャンルファンタジー・ジャンルサスペンス
(あらすじ)
 最新工学研究者庄田は妻夏那子と幸せな暮らしを送っていた。ある日、夏那子がアユという謎の少女を家に連れてくる。その後、少女の父親を名乗る男が連れ戻しにやって来た。庄田はその男を見て驚く。実は、二人は戦後間もない頃、極左活動に殉じていた同志だったのである。米大使誘拐を計画していたが、内部の裏切りによって組織は崩壊してしまった。複雑な思いが庄田の中にふつふつと蘇ってくる。そして、その悔いを払拭するかのようにして彼はアユの若い肉体を犯した。その後、庄田は謎の女から強迫を受けるようになる。
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(レビュー)
 革命に殉じた者達の姿を幻想的に描いた作品。

 庄田の研究にタイムマシン的な設定を設け、50、70、80年代という3つの時間軸を放逐したところにアイディアの妙を感じる。一見すると社会派映画のようであるが、SF、サスペンスといったジャンル映画的要素や男女の愛憎ドラマも盛り込まれており一筋縄ではいかない作品になっている。また、見る人によっては全然分からない‥という印象を持つ者もいよう。極めて観念的な作りをしている。

 監督・脚本は吉田喜重。場面把握の難解さは、同年に製作された「エロス+虐殺」(1970日)を凌ぐほどである。時代が唐突に切り替わり、尚且つキャラクター設定に対する説明が無いため、ファッションや革命運動の発言といったものから、その場面がどの時代のものなのか、このキャラクターはどの時代の人物なのかを把握するしかない。後半に入ってくると、時制は更に混迷を極めていく。例えば、庄田に対するスパイ嫌疑の査問委員会のシーンは、50年代と70年代の登場人物を同居させながら展開される。やがてこのシーンは10年先の80年代の視点に継承され、もはや時間という概念そのものが遊離してしまう。

 もっとも、こうした時制の複雑化は”計算”以外の何物でもないのだろう。
 一言で言ってしまうと、本作のテーマは革命の幻想性である。革命に賭した若者達を異なる時空に彷徨わせることで、彼等の抵抗運動が時代の波に飲み込まれていった事実を皮肉的に見せているのだ。時代にそっぽを向けられた惨めさ、虚しさが強調され、彼等が掲げる「革命」が滑稽にすら写る。当時の機運としてすでにあったのかもしれないが、後に生まれる”しらけ世代”の兆しがこの映画から何となく嗅ぎ取れることは興味深い。

 尚、「煉獄」とは「天国」と「地獄」の間に存在する世界を指す言葉である。革命に取り付かれた人々が彷徨うこのカオスは、生かず死なずの「煉獄」と呼ぶに実に似つかわしい言葉だ。
 ポーランドの巨匠、故K・キエシロフスキーの未完の遺稿に「天国」「地獄」「煉獄」の三つの物語が残されている。「天国」と「地獄」は他の監督達によって映画化されたが、「煉獄」だけが未だに手付かずの状態にある。現在、カトリック教会では「煉獄」は認められておらず、そのため一般的な認知度はかなり低い。映画化が実現されない理由はこのあたりにあるのではないかと推察するが、その「煉獄」が今から40年前の日本映画のタイトルになっていたというのは実に面白いことだ。

 尚、本作は映像的に見ても色々と面白い発見が出来る。
 整然と設計された構図、無機的で幾何学的なオブジェが織り成す空疎な空間には、吉田独特の感性が見られる。まるで背景そのものが主人公のように画面を席巻する。そして、特筆すべきは無人のロケーションである。実にシュールで異様な雰囲気を醸し出している。また、露光を解放した映像もこの世のものとは思えない非現実性を浮かび上がらせタイトルの「煉獄」を意識せずにいられない。彼の映像美は前作「エロス+虐殺」に続き、本作で一つの到達点に達したと言っていいだろう。
[ 2010/05/13 01:24 ] ジャンルファンタジー | TB(0) | CM(0)

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