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KEN PARK ケンパーク

海外では上映禁止、延期。日本最速上映という曰くつきの作品。
ケン パーク ~スペシャル・エディション~ [DVD]ケン パーク ~スペシャル・エディション~ [DVD]
(2005/07/16)
ジェームズ・ランソンティファニー・ライモス

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「KEN PARK ケンパーク」(2002米オランダ仏)star4.gif
ジャンル青春ドラマ・ジャンルエロティック
(あらすじ)
 ロスの閑静な住宅街。スケボー好きな青年ケンパークが拳銃自殺した。その時、彼の友人ショーンは、ガールフレンドの母親と不倫をしていた。クラスメイトのクロードはアル中の父とスケボーを巡って喧嘩していた。ピーチーズは優しい父とボーイフレンドを交えてランチを取っていた。祖父母と暮らすテートは日頃の苛立ちを自慰行為で解消させていた。日々の暮らしの中で、4人はケンパークの存在すら忘れかけていく。
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(レビュー)
 若者達の鬱屈した感情を過激な性描写で綴った青春群像劇。

 監督、脚本は「KIDS/キッズ」(1995米)でセックスとドラッグに溺れる少年少女の姿をセンセーショナルに描いたインディーズ界の異端児、L・クラークとH・コリン。二人はその後夫々に映画を撮っていたが、7年ぶりに再びコンビを組んで撮ったのが本作である。
 エイズをモティーフにした「KIDS/キッズ」は、若者サイドの視点が作品世界を狭量的なものにしてしまっていたが、今回は家族崩壊の図式を底辺に敷いたドラマなので広がりが感じられた。ある種、家族のドラマとして面白く見る事が出来た。

 登場するのは4人の若者達である。彼等は皆、親あるいは周囲の大人との間に深い溝を作って生きている。映画の視座は若者達の悲しみや怒りに拠っており、彼らを擁護する立場で大人達の愚かさが描かれている。そこで見られる大人の子供への無関心、あるいは虐待といった"暴力”は、現代的な問題として強く受け止められる。

 例えば、ショーンはガールフレンドの母親と不倫している。この母親は表向きは穏やかな主婦を演じながら、影では不倫の背徳感を愉しんでいるかのようだ。大人としての自覚、罪の意識といったものは微塵も感じられない。
 クロードは身重の母とアル中の父と暮らしている。常日頃から父親とは対立していて、大好きなスケボーの板を壊されたことで彼の怒りは頂点に達する。その夜、酔った父親はとんでもない行動に出るのだが、これは紛れもない児童虐待である。
 ピーチーズは他の少年少女たちと違って、父親からの信頼が熱い成績優秀な女の子である。ところが、ボーイフレンドとセックスしていたところを見つかり、父の信頼を裏切ってしまう。信仰心の厚い父は彼女に神の導きを教えようと、ほとんど狂信的と言っていい病的な行動に出る。ピーチーズが母親に瓜二つということを鑑みれば、これは恐るべき近親相姦と言える。
 そして、最も悲劇的な末路を遂げるのが引き篭もりの少年テートである。彼は常日頃から過保護な祖母の干渉にうんざりし、頑固な祖父に反感を抱いている。学校でも家庭でも孤立する彼はやがて戦慄的な凶行に走る。

 彼等の悲惨な日常をスケッチする形で映画は展開されていくが、ラストで冒頭のケンパークの自殺の原因が何だったのかが分かる構造になっている。4人の置かれた状況を目にして、改めて彼の自殺について考えると一定の情を禁じえない。確かに自殺は良くないことである。しかし、彼は純粋すぎて自分に嘘をつきたくなくて自らの命を絶ったのだと思う。その死は誰からも責められるべきものではないだろう。むろん、彼の自殺に理解を示せるかどうかは見た人それぞれの解釈によると思う。しかし、彼のような選択をする若者達がこの世の中にいるという現実。それについて考えさせられただけでも、本作を見た価値はあったように思う。

 尚、最も印象に残ったシーンは、終盤直前のショーンとクロード、ピーチーズのセックス・シーンだった。透明感あふれる美しい映像とは裏腹にどこか物悲しさも感じさせる。行き場を無くした子供達の求愛行動が不憫に見えてしょうがなかった。

 演出は基本的にドキュメンタリータッチが採られているが、時折叙情的な淡いトーンで耽美的な画面設計がはかられている。いかにも印象派L・クラークらしいセンスである。

 また、問題となった性描写はかなり大胆で、チャイルド・ポルノを売り物にした下世話な作品‥と思う人もいるかもしれない。確かにしつこく感じる部分もあった。ただ、これらがあることで作品のテーマはより強く主張されることになったと思う。自分には必然性があると感じられた。
[ 2010/05/19 01:59 ] ジャンル青春ドラマ | TB(0) | CM(2)

今晩は、ありのさん。今、「表現の自由(特に漫画とアニメに関して。)」を巡る問題(「東京都青少年健全化条例改正案」と「改正児童ポルノ法」)が最近クローズアップされているそうですが、この映画も例外ではないかもしれません。国際的な「子供と青少年の健全育成」と「児童(子供)が被害者(性的・肉体的etc.)」になる犯罪の撲滅もいいのですが、この作品レヴューを読んで感じた事は、「表現の自由」も守る事も忘れないでほしいです。
[ 2010/05/19 20:24 ] [ 編集 ]

こんばんは、にょろ~んさん。
表現の自由についての論議は、いつの世にも絶えることのないテーマですね。
お国柄や時代にもよるでしょうが、果たして何歳までが未成年者かという問題も含めて、この論議は今後更に取り沙汰されていくと思います。
ただ一つ言えることは、表現自体を規制することで、問題意識の高い本作のような作品がこの世から消えてしまうというのは非常に残念な気がしてしまいます。
[ 2010/05/21 01:42 ] [ 編集 ]

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