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告白

緊張感のある語り口、エキサイティングな幕切れ。暗く陰鬱なドラマであることは確かだがエンターテインメントとして良く出来ているし、色々と考えさせられるものがあったという意味で見事な傑作である。
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ジャンルサスペンス・ジャンル人間ドラマ
(あらすじ)
 中学校教師森口悠子は終業式の日、担任する生徒達の前で衝撃的な告白をする。学校のプールで事故死した自分の幼い娘が、実はこのクラスの生徒AとBによって殺されたこと。そして、少年法で守られる彼等に対してある報復に及んだこと。その告白は生徒達に暗く重いトラウマを残した。新学期が始まり、森口が去ったクラスでは早速Aに対する虐めが始まった。一方、Bは不登校になり部屋に引き篭もるようになった。何も知らない新担任寺田は学級委員長美月を連れてBの家を週一回訪問するようになる。しかし、それはBを更に追い詰めていくことになり‥。
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(レビュー)
 センセーショナルな内容で2009年本屋大賞に選ばれたベストセラー小説を、「夏時間の大人たち」(1997日)、「嫌われ松子の一生」(2006日)等で知られる中島哲也監督が映画化。少年犯罪者に対する復讐を緊迫感溢れるタッチで描いている。

 冒頭30分の森口の告白は、その余りの衝撃的な内容に言葉も出なかった。命が軽んじられることへの憤りと、犯人である少年達への怒り、そして復讐の念に駆られた森口への憐憫と同調。渾然一体となった感情が沸き起こり、作品の中に一気に引き込まれた。そして、犯人探しのミステリを早々に切り上げ、物語は次のステージである森口の復讐劇へと移行していく。
 森口の”卒業祝い”ならぬ”卒業呪い”が残したトラウマは更にドラマを悲劇へと向かわせていく。復讐の恐ろしさを実感せずにいられない。

 中島監督というと、「下妻物語」(2004日)に代表されるように、これまではポップな色彩と軽快な映像演出が得意な作家のように思っていた。しかし、今回はそういった演出はごく一部で見られるのみである。作品全体を覆うのは寒色系で冷覚なトーン。そして、森口の告白の後に続く少年Aと少年Bの告白、彼等の親の告白、学級委員長美月等の告白が淡々と語られていく。そして、この淡々とした語り口の中には、鬼気とした情念がはっきりと秘められている。決して今までのように陽気に見れる作品ではない。しかし、緊張感を持ちながら見る事が出来たという意味では大変面白い作品だった。

 ただ、少年犯罪という社会派的な問題を孕んではいるものの、事件そのものに対するリアリティの欠如や、いつもの中島監督らしいコマーシャリズムな映像演出が邪魔になってしまい、作品自体を近隣のものとして受け止めるまでには至らなかった。例えば、あれだけ大っぴらにサイトを公開していたら普通は通報されるだろうし、少年Bや美月の家庭環境の希薄さはこのドラマを地に足のつかないものにしている。したがって、本作はむしろ寓話と捉えた方がいいのかもしれない。殺人に走る少年達の心理。あくまでそれを炙り出すためのドラマ‥といった具合に限定的に捉えた方がいいだろう。

 尚、少年AとBに「罪と罰」的な因果を負わせたところは興味深い。尊い人命を奪った代償は高くつく。安易に赦しを与えず、この映画は彼等を厳しく断罪している。更生の難しさを考えさせられるとともに、そうなるしかない‥という実に合点のいくオチに思えた。変な言い方かもしれないが、よくぞ正直にここまで描いてくれた‥という、ある種のカタルシスも感じられた。

 また、ニーチェの超人思想の歪曲としか言いようがない少年Aの行動規範にも深い関心を寄せる事が出来た。
 今作を見て思い出されるのは、S・ブロック主演の「完全犯罪クラブ」(2002米)という作品である。これは、アメリカで実際に起こった殺人事件をベースに描かれたサイコ・サスペンス作品で、対照的な二人の高校生が少女を殺害して完全犯罪を企てる‥という物語りだった。筋書きが本作とよく似ている。そして、「完全犯罪クラブ」の少年たちの心理にも本作の少年Aと同様に超人思想がはっきりと存在していた。
 また、A・ヒッチコック監督が1シチュエーション1シーンで撮った傑作サスペンス「ロープ」(1948米)でも、この超人思想は出てくる。
 自分の優位性を証明するために殺人を犯すというのは、今回のような無差別殺人の場合はよく見られる心的動機である。今だに記憶に新しい秋葉原連続殺傷事件も、犯人の稚拙な自己顕示欲から生まれた悲劇と言っていいだろう。犯人をそこまで追い込んだ原因。そこに目を向ければ自ずと解決策は見つかるが、実際問題として、事件を未然に防ぐ事は中々難しい。この映画を見てもその事を痛感させられた。
[ 2010/07/06 00:57 ] ジャンルサスペンス | TB(0) | CM(2)

今晩は、ありのさんへお久しぶりです。この作品は中島哲也監督の演出と松たか子さんの全身全霊を込めた演技が注目されたのですが、僕は今注目を集めている子役タレントの一人である、芦田真菜さんが活躍のキッカケを
つかんだ作品でもあるんですね。その後、彼女は笑福亭鶴瓶さんと山寺宏一さんと共にユニヴァーサル映画のファミリー・キッズ向けの3Dアニメ映画の「怪盗グルーの月泥棒」の日本語吹き替えのボイス・キャストも担当していたんですよね。彼女の活躍は凄いしそして日本中の人々の心をつかみ鈴木福君と共に「小さなスター」の仲間入りしたんですよね。来年も芦田真菜さんの活躍に期待したいです。
[ 2011/12/06 21:34 ] [ 編集 ]

こんばんは。芦田真菜さんが出演していたのは気付きませんでした。まだ当時は今ほどの人気はなかったはずなので、ここから彼女は活躍の場を広げていったのでしょうね。
[ 2011/12/09 02:29 ] [ 編集 ]

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