国際色豊かで中々ユニークな映画。
「TOKYO!」(2008仏日韓国)
ジャンルファンタジー・ジャンルロマンス
(あらすじ) 3人の外国人監督が東京を舞台に撮ったオムニバス作品。
第1話「インテリア・デザイン」は、田舎から出てきたカップルが友人の部屋に居候しながら新居を見つけようとする話。
第2話「メルド」は、下水道に住む謎の怪人メルドが街中を混乱に陥れる話。
第3話「シェイキング東京」は、引き篭もり青年とピザ配達の少女が恋に落ちる話。
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(レビュー) M・ゴンドリー、L・カラックス、ポン・ジュノといった個性派監督が東京を舞台に撮ったオムニバス作品。斬新なタッチが面白く見れた。
第1話は、都会に馴染めない田舎娘が最後には○○になってしまうという奇談。ギスギスした人間関係、猫の額ほどの居住空間。外国人から見たリアルな東京とはこういったものか‥というのがよく分かる作品である。映画監督志望の加瀬亮の甘えた喋り方をするダメ男振り、それに振り回される恋人藤谷文子の薄幸さが良い。ラストはなるほど‥と思えるようなオチになっていて、ゴンドリーらしいブラック・メルヘンになっている。中々の快作といって良いのではないだろうか。
第2話は、ゴジラをモティーフにした作品。伊福部昭のBGMで始まり驚かされる。地下に住む片目の怪人メルドが人々を驚かす冒頭のシーンは、一部ゲリラ撮影と思しきものがあり生々しく撮れている。演じるのはカラックスの盟友D・ラヴァン。解読不能の言葉で狂った怪演を披露する彼のアドリブ演技も面白い。東京=糞=メルド(フランス語で「糞」)という、ある種反日的な傾向を持った作品であるが、そういったイデオロギーはこの際抜きにして作品そのものを楽しみたい。とは言っても、狐につままれたようなオチは少々おふざけが過ぎるという気もするが‥。
第3話は、引きこもりという社会問題を取り上げている。監督はポン・ジュノ。引き篭もりは韓国でも大きな社会問題になっているだけに、韓国出身のジュノには他人事ではないのだろう。ただ、時代を近未来に設定したため風刺は若干弱くなってしまった。ジュノ監督らしい毒が少々物足りない気もする。そもそも、このドラマは引っ込み思案な青年に訪れる軌跡の恋という極めてロマンチックな味付けのされ方をしていて、引き篭もりという社会問題自体、クライマックスを盛り上げるための”カセ”に過ぎないという気がした。ただ、演出的には3本中最も洗練されていて、作品のクオリティは一番高いと思った。オチにもう一つインパクトがあると尚良かった。
国籍が異なる3人の監督たちに東京という街を舞台にフリーに撮らせた、この企画自体は面白い試みだと思った。ただ、「TOKYO!」というタイトルがついていながら、東京である必然性が感じられたのは第1話のみで、あとの2作品は余り必然性が感じられなかったのが残念である。おそらく外国人が見る分には新鮮に写るのだろうが、我々日本人が見ると詰めの甘さは色々と出てくるだろう。
個人的には3人とも好きな監督だったので、一度に3つの作品が見れたというお徳感もあり全体的に満足のいく作品だった。