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ある朝スウプは

二つの世界に分け隔てられた男女の激しい衝突が魅せる!
ある朝スウプは [DVD]ある朝スウプは [DVD]
(2006/02/22)
高橋泉廣末哲万

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「ある朝スウプは」(2003日)星3
ジャンル人間ドラマ
(あらすじ)
 パニック障害で精神科に通う北川は、同棲する恋人志津の愛に支えられながら生きていた。志津は中々就職が決まらず、最近焦りを感じ始めている。そんな二人の生活は日ごとすれ違いを増していく。北川は在宅の仕事を始めながら、セミナーと称して頻繁に出かけるようになった。ある日、彼が無断で40万もする黄色いソファーを買ったことから二人は口論になる。問い詰めると、それはある新興宗教から買ったと言う。
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(レビュー)
 宗教にのめり込んでいく青年と、彼を現実に引き止めようとする女性の愛を描いた作品。

 監督・脚本・主演は以前このブログで紹介した「14歳」(2006日)を手がけた”群青いろ”というユニットである。ユニットのメンバーは高橋泉と廣末哲万の二人。本作は高橋が監督・脚本・撮影・編集を務め、廣末が主演を務めている。ちなみに、「14歳」は監督・主演が廣末で高橋は脚本のみの参加だった。両作品を比較してみると二人の演出に若干の違いが見られて面白い。どちらもドキュメンタリー・タッチであることに変わりはないが、高橋の方が長回しが多く、よりナチュラル志向が強いように感じられた。北川と志津のやり取りがこの映画の中心になるが、それをリアルに切り取っていくことで、作品に緊迫感を生んでいる。これに比べると、「14歳」の方はスローモーション等の作為的演出が盛り込まれ、映像面での意図的な工夫が凝らされている。製作された時期や、予算、スタッフを含めた環境の違いもあろうが、映画作りのスタイルに若干の相違が見られて面白い。ただ、高橋については本作の後、脚本家としての活動が中心となり監督作が無いので、比較対照するのが本作のみになってしまう。彼の演出手腕に関しては、今の段階では未知数と言った方がいいかもしれない。

 シンプルな物語であるが、精神病と新興宗教という現代ならでは問題に正面から切り込んだ所に作り手側の問題意識の高さが伺える。いかにして離れ離れになってしまった心を愛の力で繋ぎとめていくことができるか?その試練が見せ所になっている。ある意味で、「愛のむきだし」(2008日)とよく似たテーマ性が伺える。

 本作の見所は、終始一貫して捉えられる北川と志津の激しいやり取りである。北川にとっての現実はもはや宗教の世界であり、志津との日常生活は虚構になっていく。志津との世界に徐々に接点を見出せず、彼の心は二つの世界に引き裂かれていくようになる。たどたどしく喋る北川のセリフが小声で聞きとりにくいという不満はあるが、これは彼の心が情緒不安定にあることを指し示すものだろう。その姿には説得力が感じられた。

 一方、志津は日常のテリトリーが北川の新興宗教に侵食されていくことに危機感を募らせていく。彼女の苛立ちは、書かれたセリフというよりも、キャラクター本人が喋っているように生々しく、その苦しみは見ているこちら側にダイレクトに伝わってきた。
 特に、トイレの窓を挟んでの北川との対峙は、心の底からの“叫び”のように聞こえ印象に残る。聞き取りにくいセリフや薄暗い照明等、作り自体に拙さは否めないが、この場面だけはそれを補って余りある迫力が感じられた。
[ 2010/08/27 01:08 ] ジャンル人間ドラマ | TB(0) | CM(0)

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