時を越えたファンタジー・ロマンス。今ひとつ弱い。
「ある日どこかで」(1980米)
ジャンルロマンス・ジャンルファンタジー
(あらすじ) 作家を目指す大学生リチャードは、ある日見知らぬ老婦人から金時計を貰う。それから8年後、作家として成功した彼は旅先で1枚の美しい女優の写真に心奪われる。彼女は1910年代に活躍したエリーズという女優だった。図書館で彼女について調べてみると思いがけない事実が判明する。なんと8年前の老婦人が彼女だったのだ。彼女は既にこの世を去っていた。あの時貰った金時計の意味を教えてもらうために、リチャードはタイムトラベルに挑む。
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(レビュー) 運命の恋人だと確信したリチャードは、エリーズに会うためにある方法によって現代から1912年にタイムスリップする。時代を超えた切ないロマンスが美しい映像で綴られている。
リチャードを演じるのは「スーパーマン」(1978米)の主演で華やかにスクリーン・デビューを果たしたC・リーヴ。晩年は不運な事故によって車椅子の身体になってしまい映画界から遠ざかっていたが、この作品は彼が最も輝いていた頃の一本で正統派二枚目スターの魅力を存分に堪能できる。
物語はメロドラマとしてはやや通俗的でありながら、ポイントをしっかり抑えた作りになっている。若かりしエリーズと再会を果たしたリチャードは身分を隠して彼女と親密になっていく。しかし、売れない女優をしている彼女には、長年面倒を見てくれたパトロンがいる。リチャードはエリーズを巡って彼とライバル関係になっていく。身を引いて彼女の女優としての成功を見守るべきか。それとも、歴史に逆らって彼女に断ち切れぬ想いを伝えるべきか。切ない葛藤がドラマを大いに盛り上げている。
ただ、厳しく見てしまうと、どこにもである感傷的なドラマと一蹴することも可能である。紋切り的で、物語のどこかで”捻り”が欲しいという気がした。また、タイムトラベルのきっかけも突っ込みを入れたくなるような強引さで説得力のあるSF設定を求めたかった。大仰なBGMの使用もセンスに欠ける。
そこで、見終わった後に、このドラマをどうすればもっと面白くできるか、あれこれ妄想してみた。
この映画の視座はリチャードにある。ここは一つエリーズの側から見たリチャード像というのを入れてみるのも面白いのではないだろうか。クライマックスにおける彼女の喪失感。それを冒頭のシーンに結びつけることによって、エリーズの恋情がクローズアップされ切なさがいっそう増すのではないかと思う。また、結末が冒頭に戻ることで、二人のすれ違いにメビウスの輪のごとき神秘性と永遠性が加わりドラマチックさも増す。そのためには当然エリーズにも重い葛藤を背負わせる必要性が出てこよう。
考えてみると、この映画はそこも含めて彼女のドラマに深く切り込めていなかったような気がする。あと一つ何かが足りないとすれば、そこではないだろうか。