時を越えたファンタジー・ロマンス。ありえね~と思いながらも入り込んでしまう。
「フォーエヴァー・ヤング/時を越えた告白」(1992米)
ジャンルファンタジー・ジャンルロマンス
(あらすじ) 1939年、アメリカ空軍のテスト・パイロット、ダニエルは恋人を交通事故で失い失意のどん底に落ちる。自暴自棄になった彼は、親友ハリーが行う軍の最高機密、人間冷凍実験に志願する。それから50年間、ダニエルは冷凍装置に入ったまま軍の倉庫に放置された。ある日、悪戯で潜り込んだ少年ナットによってダニエルは冷凍装置から目を覚めす。様変わりした世界に戸惑いながら、彼はナットと母クレアの協力を得ながらハリーを探そうとする。
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(レビュー) 50年間眠り続けた男が、かつての恋人を求めて様々な障害に立ち向かっていく軌跡のファンタジー。
ドラマとしてはリアリティに乏しいし、SF的な設定に関しては十分な説明も無い。しかし、そういったご都合主義はあるにしても、見せ方が非常に上手い。作品として上質に仕上がっている。
人は誰でも過去にやり残した事、後悔した事を抱えながら生きているものだ。本作の主人公ダニエルは、恋人に告白できなかったことを後悔している。彼は冷凍装置に入ったまま50年後の未来にタイムスリップし、それを実現しようとする。斜に構えてしまうと”嘘っぽい”という感想になろうが、映画に夢を求めるのも人の情。その欲求に素直に応えてくれるのが、この映画の良い所である。
そして、”嘘っぽい”と見せないためにこの映画では様々な工夫が凝らされている。俺が感心したのは以下の2点ある。
まず1点目は、冷凍睡眠から目覚めたダニエルが世話になるクーパー家との交友描写である。クーパー家は別れた暴力夫に付きまとわれて困っているのだが、それをダニエルが排除することで一家に迎え入れられる。言わば、用心棒代わりのように受け入れられるわけだが、これが徐々に擬似家族のようになっていく所がミソだ。
ちなみに、ここでダニエルと母クレアは安易に恋仲にならない。男と女。普通なら助平心が芽生えてもおかしくないところを、あくまでプラトニックな関係に抑えている。
クレアは仕事をしながら子供を育てる独立心の強い女性である。目の前に突然現れた見ず知らずの男に心を奪われるなどしたら、彼女の性質から言ってそれこそ嘘っぽくなってしまうだろう。映画は二人の関係を微妙な距離感で描いており、これが中々のリアリティを持っていて物語の“嘘っぽさ”を払拭している。クレアを演じたJ・リー・カーティスの軽妙な演技も良い。彼女のおかげで変に隠微にならないで済んでいる。
一方、息子ナットは母親と違ってダニエルを心から信奉している。憧れの空軍パイロットで、腕っ節も強く話も分かる頼りがいのあるナイスガイである。ナットにとって正に理想の父親像である。この擬似父子関係は実に爽やかに見れた。
そして、感心した2点目は技術的な面である。クライマックスシーンは普通に考えたらどうして?何故?の連続だが、それをクオリティの高い特殊メイクが支えている。
一昨年見た
「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」(2008米)の特殊メイクにも感じたことだが、何十年という人生を一人の俳優が演じているのに、それを自然に見せてしまうハリウッドの特殊技術の高さには毎度のことながら感心させられる。これこそ映画のマジックだろう。特殊メイクを担当したのは、「ゴッドファーザー」(1972米)、「エクソシスト」(1973米)、「タクシードライバー」(1976米)、「アマデウス」(1984米)等、数々の傑作でその手腕を発揮した大家D・スミス。”嘘っぽさ”を自然に見せてしまう彼の技術は見事である。このクライマックスシーンは実に感動的だった。
尚、この映画にはもう一つしみじみときたシーンがあって、それは中盤のダイナーのシーンである。時代の流れと共に変化した風景に、ダニエルは一つだけ昔と変わらないものを見つける。それが恋人と最後に過ごした思い出のダイナーである。イスに座って感慨にふけるダニエルの姿にジンワリさせられた。