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ブラインドネス

これは人類に対する神の啓示なのだろう。しかし、その部分のフィーチャーが弱い。
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(2009/04/03)
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「ブラインドネス」(2008日ブラジルカナダ)hoshi2.gif
ジャンルSF・ジャンルサスペンス
(あらすじ)
 世界各地で謎の奇病が発生する。アメリカ在住の日本人男性が、自動車を運転中に突然視力を失った。その後、彼に接触した人間は次々と視力を失う。政府は感染性が強い奇病であると断定し、彼等を隔離施設に閉じ込めた。しかし、感染は収まるどころかますます広がっていった。そんな中、医師の妻はただ一人この奇病を逃れた。彼女は施設に入れられた夫の傍に付き添いながら患者達の世話をするようになる。やがて施設の中では食料を巡って争いが起こる。
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(レビュー)
 原因不明の失明によって人類が混乱に陥っていくSFパニック映画。

 奇病の原因や社会的な背景等、映画の設定が色々と曖昧にされている。本作はあくまで寓話として捉えるべきであって、リアリティ云々というのはこの際置いておくべきなのだろう。ただ、そうとは分かっていても色々と不満の残る作品だった。

 物語は隔離施設で起こる様々な事件によって展開されていく。強奪、レイプ、賄賂等、無法地帯と化していく惨状を、唯一目が見える医師の妻が目撃していくというものだ。やがて、施設には暴君が表れ、人間の尊厳を無視した圧制で患者達を支配していくようになる。食料と引き換えに女達が次々と姓の奴隷になっていくシーンに心を痛めた。しかし、印象に残ったのはこのシーンだけで、それ以外は平板過ぎて退屈する。施設内の登場人物は中々個性的なキャラクターが揃っていて期待させるのだが、その設定をまったく活かしきれていない。例えば、日本人夫婦が愛を取り戻してくエピソード、売春婦が母性愛を目覚めさせていくエピソード、強盗犯が改心するエピソード等、面白くしようと思えばいくらでも面白く出来るエピソードが揃っているのに、その全てが消化不良なのだ。表層をなぞるだけで、これでは中々真に迫るドラマにはなり得ない。それ以前にエピソードの詰め込みすぎという気もするし、どうにも散漫で力強さに欠ける作品だった。

 また、演出にも首を傾げたくなるものがあった。白を基調とした映像は、目が見えなくなった患者の“主観”を意識させたものなのだろう。観客にその疑似体験をさせようという目的は分かる。物語の導入は患者達の視点で語られているから、こうした作為的な映像を持ってくるのも分かるが、基本的にこの物語の語り部は、この世で唯一目が見える医師の妻にある。患者達の視点ではなく、あくまで彼女の客観的な視点を堅持するのが、映画の作り方としては筋なのではないだろうか。白を基調とした画面が、かえってわざとらしく思えて仕方がなかった。

 監督は俊英F・メイレレス。彼はどちらかと言えば映像を重視する作家だと思う。今回も独自の感性に忠実に、いかにも彼らしいスタイルにこだわって計算して映像を組み立てているが、白を基調にした画面はドラマの視点から乖離するものに思えた。

 ところで、目が見えない演技とは、普通の演技に比べると格段に難しいものである。有名な戯曲を映画化した「奇跡の人」(1962米)におけるヘレンとサリバンの凄まじい対立はもはや語り草になっているが、この時の二人の目が見えない演技には圧倒されてしまった。“演技をしている”ということをついつい忘れてしまうくらい真に迫るものがあった。しかし、本作の個々の演技に、そこまでの力強さ、真に迫る迫力はあっただろうか?無論、群像劇である本作は、ほぼ全員が目が見えないという状況に置かれているわけであるから、細かな点で綻びが出てしまうのは致し方がないことなのかもしれない。しかし、メインキャストの一人である医師の後半の演技については、もはや演出の抜かりとしか思えないような、不自然且つ不徹底な演技が多すぎる。これは作品を見ていて随分と興がそがれる原因になった。

 終盤から物語はスケールアップしていく。施設の中から外へドラマの視界が広がっていくのだが、この荒涼としたロケーションは中々リアリティがあって良かった。これだけ魅力的なデストピア風景を見せられると、個人的にはもっと外の世界を見てみたかった‥という気もする。無いものねだりかもしれないが、「28日後...」(2002英米オランダ)の荒涼としたロンドンの風景。あれを更にスケールアップしたような世界観を見たかった。
 もっとも、これまで地味な社会派作品を撮ってきたF・メイレレス監督だけに、そこまでジャンル映画に傾倒するのは本人としてもしたくなかったのだろう。作品の出来については色々と不満を述べたが、自らのスタンスを貫いたその姿勢には拍手を送りたい。
[ 2010/09/08 01:46 ] ジャンルサスペンス | TB(0) | CM(0)

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