ストーカーの暴走っぷりが面白くもあり、怖くもあり‥。
「キング・オブ・コメディ」(1983米)
ジャンルコメディ
(あらすじ) コメディアン志望のルパートは、人気スター、ジェリーの出待ちをして自分を売り込む。熱狂的なファンの女を追い払ったことで気に入られ、彼はジェリーの名刺を貰った。ところが、その後いくら事務所に電話をかけても一向に返事が無かった。ついに直接彼のオフィスの門を叩くが、ガードマンにすげなく追い払われてしまう。その後、何度も足しげく通い、ついにジェリーの秘書に自分のネタを吹き込んだテープを渡すことに成功した。しかし、喜びも束の間。その後も居留守を使われついにルパートは実力行使に出ることを決意する。
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(レビュー) 監督M・スコセッシ、主演R・デ・ニーロというお馴染みのコンビが、スターを夢見る男の狂気をブラックに描いた喜劇。
デ・ニーロ演じるルパートは、自宅に閉じこもってスターの真似をしたり、憧れの女性に将来大スターになると豪語したり、ほとんど自家中毒的と言ってもいい妄想型人間である。客観的に見れば彼のコメディアンとしての実力は未知数だ。何しろ今まで一度もステージに立ったことがなく、単にコメディアンの素質があると勝手に思いこでんいるだけなのだから‥。その後、ルパートはジェリーの名刺を頼りに彼の事務所に何度も通う。しかし、そのたびに門前払いを食らい、ほとんどストーカーのようになっていく。こう書くと現実と妄想をごっちゃにした悲惨な男のドラマと思うかもしれないが、映画のテイストは割りとコメディライクに演出されている。そのまま描いてしまったらさぞかし陰惨なドラマになっていただろうが、スコセッシはライトにこのドラマを料理している。
ただ、現実にハリウッドにはルパートのように夢破れ散っていく人間が大勢いるという。そのことを考えると、この物語は見る人によっては、特に業界関係者にとってはかなり毒の効いたコメディに写るのではないだろうか。体制に抗うことで知られるスコセッシのこと。そういった人々に皮肉を込めてこの映画を作っているのかもしれない‥そんな穿った見方も出来る。
ところで、同じくデ・ニーロがスターに憧れるストーカー役を演じた作品で「ザ・ファン」(1996米)という映画がある。監督は良くも悪くも職業監督的なところがあるT・スコット。「ザ・ファン」の方はサスペンスに重点を置いた作りになっている。同じような題材を描いているが、T・スコットとM・スコセッシ、両者の作家性の違いが見られる所は興味深い。個人的には、毒の利いた「キング・オブ・コメディ」の方が歯ごたえがあり面白く感じられたが‥。
ただし、オチについては少々言いたい事がある。ルパートのこれまでの狂気性を考えたら、このオチは安易に写ってしまう。確かに<人気>=<実力>じゃないのがこの世界だ。それを言いたのは分かるが、オチにはもう一捻り欲しい。
また、サブキャラである女ストーカーの顛末を放出したままなのもいただけなかった。実は、役柄としてのエキセントリックさで言うと、ルパートよりもこの女ストーカーの方がインパクトがあった。彼女は言わばドラマのキーパーソンで、演じる女優の強烈なビジュアルと怪演はある意味で完全に主役のデ・ニーロを食っている。それくらい重要な役回りなのに、そのドラマが消化不良なのはちょっと残念であった。
私はあのオチは現実ととっても妄想ととってもいいよってことだと思いました。
なるほど‥確かに現実と妄想のどちらか判然としないオチではありました。答えを観客に放出したところに味があるのかもしれませんね。
途中途中に挟まる現実との区別がつかない程の妄想はある意味ラストの解釈を観客に委ねる為の複線だったのかもしれません。
そしてこの映画のタイトル“キングオブコメディ”(笑いの王)は全くもって“笑えないヤツ”だった訳ですねw
こんばんは、耳さん。
実は、この映画を見て真っ先に連想したのが「エブリバディ・フェイマス」という映画でした。これは娘の歌手デビューを実現させようとする父親が誘拐騒動を起すブラックコメディで、やはり現実と妄想をごっちゃにした男の奔走劇でした。
こういう映画はシリアスに描けばひたすら悲劇にすることも出来ますが、大概はコメディとして料理する場合が多いですよね。つまり、さじ加減一つでどうにでもなるという‥。
「キング・オブ・コメディ」は正に喜劇でもあり、悲劇でもある映画なのかもしれません。
異常なファンの行き過ぎた追っかけ行為の恐怖みたいな点ではミザリーっぽい感じはしますよね。
スコセッシ本人も言っていたように、劇中では敢えてちょっとふざけたような演出(ジェリーをテープでグルグル巻きにするような)でまとめていますよね。
そして確かにインパクト抜群の女ストーカーはある種怖くてある種面白い、彼女でなかったら色んな意味で違った感想を持ったかも知れません。
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