見終わった後に「イェーィ」と言いたくなる。
「さらば友よ」(1968仏)
ジャンルサスペンス
(あらすじ) アルジェリア戦争から帰国した軍医バランは、外人部隊のアメリカ人兵士プロップから次の戦地であるコンゴ行きを誘われる。しかし、戦争に嫌気が差した彼はそれを断った。その後、バランは同じ部隊で戦死したモーツアルトの恋人イザベルと出会う。大企業に勤める彼女から、会社の金庫に債権を戻すという奇妙な仕事を依頼された。バランは医師として彼女の会社に潜り込む。一方、プロップは退役して、金持ちが集まる秘密売春クラブで詐欺を働き大金をせしめた。しかし、彼はいつか一発大きな仕事を当てたいと思っていた。そこでバランの計画に首を突っ込むようになる。
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(レビュー) A・ドロン、C・ブロンソンが競演した犯罪映画。正に男による男のためのような映画である。
尚、ブロンソンは「荒野の七人」(1960米)や「大脱走」(1963米)ですでに一定の人気はあったが、その人気に更に火をつけたのが本作と言われている。このヒットを受けて彼はデスウィシュシリーズ等でアクションスターに上り詰めていった。
バランとプロップは最初は対立関係にある。両者とも一匹狼でわが道を行くタイプだ。プライドも高いので、顔を合わせればすぐに喧嘩になる。例えば、金庫破りの仲間に入れてくれなきゃドアを開けてやらないとか、自販機の食料を独り占めするとか‥。この辺りは決して格好良いわけではない。むしろ、子供じみた意地の張り合いにしか見えず「バカだなぁ」くらいにしか思えない。
ところが、その後に金庫破りという共通の目的が出来てから、二人は打ち解けあい徐々に格好良く見えてくるようになるのだ。友情といっても決してベタベタした関係ではない。ある時は裏切り、ある時は助け合う。そんな抜き差しならぬ微妙な距離感が実にクールで格好いい。
本作には彼等以外にキーマンとして二人の重要な女性キャラクターが登場してくる。実は、この物語は男の友情をテーマにしているが、その裏側では女性のしたたかさ、非情さといったものも語られている。先述の子供じみた意地の張り合いに見られるように、男という生き物は案外稚拙なプライドを持っていたりするものである。しかし、女にはそういった稚拙さはない。バカにされたら倍にして返してやろうという策が働く。男のように直感的に実力行使に出るのではなく、もっと計算高いやり方で相手をやり込めようとするのだ。本作に登場する二人の女性のしたたかな振る舞いを見るにつけ、この映画は実は女性上位のドラマであったのか‥という事に気付かされる。逆に言えば、男はいざと言う時に情に溺れて非情になりきれないという弱さを持っている。つまり、これが本作のテーマである「友情」というところに結びつくわけである。
シナリオはかなり強引な部分があるが(例えば防犯カメラと火災報知器を無視したサスペンス展開には退屈せざるをえない)、主役の二人の魅力を前面に出そうとした作りは、スター映画然とした潔さを感じる。密室で二人が半裸になって語り合うシーンは“やり過ぎ”な感じもするが、女性ファン向けのサービスシーンと捉えれば微笑ましい。
また、ラストも印象に残った。どう考えても冷静さに欠く“ヘンテコ”な演出なのだが、ブロンソンとドロンがやると何故だか格好良く見えてしまう。映画が終わった後に「イェー」と言いたくなった。正に役者の魅力に支えられた作品と言っていいだろう。