ジージャン姿の原田芳雄が格好良い!
「反逆のメロディ」(1970日)
ジャンルアクション
(あらすじ) 関西のヤクザ哲は淡野組が解散したことで路頭に迷う。仕方なく関東で兄が組織する立花組に入った。兄が服役中だったこともあり、変わって哲が凋落著しい組を立て直すことになった。そこに元淡野組の組長淡野大治郎が乗り込んできた。彼は関東周辺の暴力団組織をまとめ上げて建設会社を設立しようと構想していたのである。哲はその傘下に入る事を断固拒否した。そんなある日、哲は淡野を仇とする一匹狼滝川と出会う。
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(レビュー) 変わり行く闇社会を舞台に、一匹狼たちの孤独な戦いを激しいバイオレンスシーンで綴ったアクション作品。
本作は大映と日活が共同で配給したダイニチ映配の作品である。すでに斜陽産業となっていた業界におけるダイニチの立場は相当厳しかったようで、この共同配給も苦肉の策であったが、実績を上げられずたった2年足らずで終了してしまった。本作はその時期に作られたうちの1本である。70年代の風俗をリアルに絡めたところが独特の風情を醸している。当時のヤクザ映画とは一線を画すテイストを持っており、後のいわゆる東映”実録物”の前兆的な匂いも感じられた。
まず、哲役の原田芳雄のジージャン姿に、同時代的な匂いが感じられた。ヤクザというよりもチンピラといった風体で、これは当時の新宿界隈に出現したフーテンの若者の姿にどことなくダブって見えてくる。また、地元に密着する形で興隆していた暴力団組織が、大規模な産業分野へ事業をシフトさせていったのも、いかにも高度経済成長時代を思わせる設定である。すでに鈴木清順が日活で現代的なヤクザ像を撮っていたが、ここまで近代化したヤクザ像はまだ無かったように思う。そういう意味では、当時としてはかなり先進的なヤクザ映画だったのではないだろうか。
そして、この同時的な匂いは、作品のテーマにも密接に繋がってくる。簡単に言ってしまうと、本作は義理人情が重んじられる任侠世界からの脱却。つまり、時代に合わせる格好でビジネスライクな繋がりに傾倒していった闇社会の変化を憂うドラマになっている。哲や滝川といった血気盛んな若者達が昔気質の義理人情を重んじ、淡野や哲の兄といった古参が変革を望むという、普通に考えると逆ではないかという意外な設定が中々面白い。
クライマックスにかけての展開は中々痺れる。オチも時代を考えれば衝撃的と言うほどでもないが、収まり具合としては中々良い。
製作年代が近いということで言えば、やはりダイニチ映配の「野良猫ロック」シリーズに近いテイストも感じられた。シリーズの顔だった原田芳雄、藤竜也、地井武男の3人が、バーでビールを飲み交わすシーンは「野良猫ロック」を知っているとニヤリとさせられる。この場面にはしみじみとした男の友情が感じられた。また、その傍らで寄り添う紅一点、梶芽衣子も「野良猫ロック」では馴染みの女優である。彼女はここではキーパーソンとして中々の存在感を見せつけている。